業務やUI見直しオンライン申請稼働

 続いて2番目のテーマであるコロナ関連の行政手続きのオンライン化では、横浜市経済局イノベーション都市推進部新産業創造課の石塚清香ICT専任職が、「危機関連保証認定のスマート申請化」と題して報告した。

 同市の経済局金融課は、新型コロナウイルスの感染拡大により申請数が増大した「危機関連保証認定」の手続きを、全国で初めてオンライン化した。この認定は、災害などの要因で中小企業に著しい信用の収縮が起こったことが確認されたときに発動される支援策の1つ。前年売り上げに対し一定の低下が起こったことが確認できた場合に認定書を発行し、それに基づいて金融機関から保証協会の保証付き融資を受けられる。「20年5月以降は、40万円を上限とした実質無利子・無担保融資を受けるための要件にも活用されている」(石塚氏)。

 横浜市は、行政手続きのオンライン化に関して多くの自治体で案件を手掛けるグラファーに相談し、共同で取り組んだ。経済局が運用するITなどを活用した民間企業との交流プラットフォーム「I・TOP横浜」の実証実験の一環として、既存の「Grafferスマート申請」サービスの仕組みをベースに実装したため、検討開始からリリースまで2カ月弱で実現できた。

石塚 清香氏
石塚 清香氏
横浜市 経済局 イノベーション都市推進部 新産業創造課 ICT専任職

 「危機関連保証認定の申請は、通常だと1日に1~2件。だが、コロナによって急速に申請数が増え、ピーク時には1日197件もの申請があった。窓口の対応は紙での申請がベースで、1件あたり短くても30分、長いと3時間かかっていたため、窓口の3密を招いてしまう状況だった」(石塚氏)。

 そこでまず金融課の職員と業務を分析し、申請書の記載項目が分かりにくい、手作業による検算が必要になる、添付書類が多く確認に時間がかかるといった課題を洗い出した。そのうえで、「窓口業務は申請者に認定書を渡すことに限定。それ以外のフローをオンライン化すると決めた」(石塚氏)。

 続いて、UI(ユーザーインタフェース)を改良して、入力の間違いを減らして時間を短縮するため、入力項目を精査した。手動で入力を行う必要がある項目、自動入力で済む項目などに仕分けした。「可能な限り項目を少なくすることを目指した。例えば法人情報の入力については、国税庁のAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)と連携した自動入力を導入した」(石塚氏)。

 添付書類も見直した。全部で7つの書類の扱いを変更した。認定申請書は入力項目を基にシステム内で生成するようにし、売上高確認書類は画像またはPDFのシステムへの添付でよいことにした。最新の法人税確定申告書等の控えの写しなど3つの書類は、提出を不要とした。申請者からの問い合わせを減らし、添付ミスを防ぐ仕組みとして、添付操作を行うタイミングで画面上に案内を出し、書類の選択肢ごとに適切な説明文に替えた。この結果、オンライン申請の開始後の問い合わせは、ほぼゼロだった。

中小企業庁に押印指針の修正を依頼

 UX(ユーザーエクスペリエンス)の向上も認められた。具体的には、「申請時の39の入力項目が16に減り、申請者の窓口での平均滞在時間が認定書を受け取る1~2分だけになった。検算作業などのバックエンドの窓口事務も1件当たり20~60分かかっていたのを10分程度に短縮できた」(石塚氏)。

 導入が成功したのは、手段の目的化を防ぎ、円滑なプロジェクト遂行を支援することに重点を置いたのが大きかったという。目的を、「スマート申請の導入・自動化」ではなく、「申請者の窓口滞在時間を削減し、事業者・職員双方の安全を確保しながら業務を遂行できる環境づくり」に置いた。石塚氏は「システムではなくサービスを作ることが重要」と強調した。

 初めての試みで、国の応援を得られたのも大きかったという。認定申請書で押印が必要なことがオンライン化で問題となったが、中小企業庁へ押印を不要とするようにガイドラインの修正を依頼。オンライン申請を事前申請ではなく本申請とすることが認められ、円滑なオンラインフローが作成できた。「来庁者の滞在時間を減らすという目的が明確だったのが、認められた大きな要因」と石塚氏は分析した。