βモデルへの移行検討団体が続々

 3氏による報告に続いて、会場に集まったコンテンツ委員が、各自治体の現状について発言した。テーマは3氏の報告内容に合わせ、テレワーク/リモートワークの状況、採用する強じん化モデル、申請手続き等のオンライン化である。

 神戸市は、「19年にテレワーク用として、庁外からLGWANに接続できるPCを数百台用意したが、コロナ禍で一気に不足に陥った」(企画調整局情報化戦略部の木村毅情報化統括責任者補佐官)。ただし、個人情報やマイナンバーを扱う業務は庁内でしかできないため、全庁でのテレワークには至っていない。「強じん化モデルに関してはαモデルからβモデルへの移行を検討しているが、セキュリティ確保や費用面の壁を感じている。クラウドベースのローコード開発やスマホ向けオンライン申請ツールが登場し、インターネットと基幹系をどうつないでいくのか、どういうインフラを使うのかが課題になっている」(木村氏)との認識を説明した。

 浜松市は、数年前からテレワークにChromebookの「管理対象ゲストセッション」モードを利用している。「端末上にデータが残らないため、セキュリティ対策になる」(企画調整部情報政策課の村越功司副主幹)。その後、LTEモデルのChromebookも少数だが導入した。申請手続きでは、トラストバンクの電子申請プラットフォーム「LoGoフォーム」を使って、特別定額給付金の振込データの作成や、飲食店の感染対策認証制度のオンライン申請受け付けなどを実施。「20年11月からはLINEで母子保健系の検診予約を始め、さらに21年初めに粗大ゴミや住民票申請のオンライン化を行う」(村越氏)。

 神奈川県藤沢市IT推進課の大高利夫課長補佐は、「テレワークで利用する端末は職場と同じだが、一番の課題は労務管理で、どう制度化するのがよいか悩んでいる。庁内強じん化ではαモデルを採用していて、β/β'モデルも検討するが、大事なのは事務の効率化につながるという目的の明確化だと考える」と発言した。

写真●ディスカッションの様子
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写真●ディスカッションの様子
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写真●ディスカッションの様子
モバイルワーク/テレワークや手続きオンライン化などの状況や課題を各自治体が説明し、意見を交わした。

 横浜市は、「コロナ禍でのテレワークは効果があったため、20年度内に端末約1300台を調達する予定」(総務局の福田次郎CIO補佐監・CISO補佐監・CDO補佐監)。強じん化については、職員が2万5000人、教職員が1万5000人おり、LGWAN系につながっている。「人数が多くリスクが高いためαモデルを採用した。VDI(Virtual Desktop Infrastructure)の導入も検討したが、職員数分のライセンスが非常に高額になるため、仮想ブラウザー方式を採用した」(福田氏)。ただし、クラウドサービスを使うケースが増えてきており、αモデルの見直しを検討する。電子申請については、マイナンバーカードでの受け付けなどの機能強化に加えて、申請を素早く処理して戻すための業務フローの見直しも検討している。

テレワーク用端末は調達難も

 東京都中野区企画部の平田祐子情報システム課長は、「テレワークは20年度に導入準備中だが、見積もりがなかなか出てこないなど、PCの調達に苦慮している」と悩みを明かした。三層の対策はαモデルであり、仮想ブラウザー方式でインターネットに接続している。「ただ、Web会議が増えて運用しづらいため、Web会議専用のインターネット回線を契約した。もちろん、セキュリティ面に配慮して様々な縛りをかけている」(平田氏)。回線については、4年後に完成する新庁舎ではLGWAN系を無線化するなど、見直しを考えている。電子申請は、東京都および区市町村が参加する東京電子自治体共同運営サービスを使っており、「将来はキャッシュレスシステムと組み合わせた申請処理の自動化を検討する」(平田氏)。

 東京都港区では、テレワークはまず管理職を中心に端末を導入。三層の対策は10年以上前に実施し、αモデルを採用した。「東京電子自治体共同運営サービスの電子申請サービスを使っており、窓口支援システムを調達中。これから導入を進める」(川口弘行情報政策監)。

 埼玉県戸田市は、モバイルワーク/テレワーク用の端末を40台導入し、保健師の訪問業務や申告会場など、主に基幹系業務に関して庁外で安全に遂行する目的で利用している。「コロナ禍では職員の半数に当たる550人が在宅勤務を強いられたこともあり、必要最低限の業務を庁外で行うことを想定し、20年11月中に550台の端末を導入して規約なども整備する」(大山水帆総務部次長兼情報政策統計課長)。

 強じん化については、現在のαモデルから利便性を高めた“α'モデル”に変えていく予定。「リモートから特定通信経由でのLGWAN系端末の操作、インターネットから来る申請の特定通信による基幹系への取り込みなどを考えている。同時にセキュリティのレベルを高めるため、EDR(Endpoint Detection and Response)の導入などを検討している」(大山氏)。特別定額給付金の申請処理の自動化は、「非常に効果があった」(同氏)と強調した。

 最後に総括として、コンテンツ委員会の代表幹事を務める奈良市の中村CIOは、「強じん化はα/βというモデルの比較だけではなく、目的や背景を知ることが大切。電子申請の受け付け処理の自動化などについては、各自治体がいろいろと工夫して進めている印象を持った」とまとめた。