ワクチン接種の管理は外部委託が多数

 プログラムの最後に、「ワクチンの接種管理システム」と「自治体DXの推進」についてコンテンツ委員18人によるディスカッションを行い、続いて「デジタル認証サービスの導入」についてコンテンツ委員会代表幹事を務める奈良市の中村眞CIO(最高情報統括責任者)を中心に意見交換を行った。

 「ワクチンの接種管理システム」について、奈良市は「一般ベンダーのクラウドベースの予約システムと、国によるVRSとワクチン接種円滑化システム(V-SYS)、さらに予防接種台帳システムが独自で動いている。診療所の接種予定を吸い上げて一元管理して、市民が予定状況を見られるようにしている。医師会の要望により、RPAを使ってメール経由で接種予定が自動登録されるシステムを急きょ作成した」(中村氏)。

 浜松市は「LINEの機能をそのまま利用している」(企画調整部情報政策課の村越功司副主幹)。東京都中野区は、「庁内開発には時間とマンパワーの制約があり、予約を含めすべて業者に委託している」(区民部の平田祐子産業振興課長兼マイナンバーカード活用推進担当課長)。

 独自開発の「T-SYS」について報告した戸田市は、その理由を「きちんとしたシステムを構築しないと、連携の仕組みと接種記録の管理が難しいと思ったため」(大山氏)と説明した。

 人口370万人超を抱える横浜市は、「委託先と情報部門で対応。フロントはAWS(Amazon Web Services)、バックエンドは別のクラウドサービスで対応した」(福田次郎CIO補佐監兼CDO補佐監)。アクセスが集中しやすい予約システムについては、「東京オリンピック2020大会の公式チケット販売サイトが採用したデンマークのQueue-itによる仮想待合室サービスなどを使ったほうが負荷を下げられるはず」(福田氏)との見方を示した。

 東京都港区は「基本的に電話のオペレーションを含めて委託している。人口25万人でそれほど多くないので、今のところトラブルは聞いていない」(川口弘行情報政策監)とした。人口90万人規模の北九州市は、「基本的には委託で、専門的な部分はコロナ対策室が関わっている。接種台帳システムやVRSの連携部分については、情報システム部門が業務フローなどの技術支援をしている」(デジタル市役所推進室デジタル市役所推進課の高尾芳彦システム運用係長)。

写真●コンテンツ委員によるディスカッションの様子
写真●コンテンツ委員によるディスカッションの様子
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DX推進のため組織・体制を改編

 「自治体DXの推進」に関する議論では、組織・体制面に関する発言が相次いだ。中野区は、「情報システム部門がDXを担っていくというスタンス。情報システムだけでいいのかという議論はあるが、結論は出ていない。新しい組織をつくる提案はしているものの、人の割り当てがなかなかうまくいかない。企画部の構造改革チーム内のデジタルシフト担当と、情報システムのDX担当が、共同で推進する体制を取っている。なお、神戸市の情報化統括責任者補佐官を務めている木村毅氏が、5月に当区CIO補佐官に就いた」(平田氏)。

 市原市の中田氏は、「5人のメンバーで、市長の施政方針であるDXを推進している。市民に使ってもらえる仕組みや、情報システムの標準化の波をしっかり捉えて、市にとって何が有益なのかを考えながら取り組んでいる」。岐阜市は「情報政策課がデジタル戦略課に変わり、課内にデジタル活用推進室ができた。ただ増員は1人だけでなかなか厳しい。市長から全部長に対してDXを進める指示は出ているので、追い風にはなっている」(CIO補佐官を務める行政部の速水清孝デジタル戦略参与)。

 兵庫県姫路市は、「20年度までは総務局総務部門に情報政策室があり、基盤とシステムの管理、マイナンバー事業を担当していた。21年度は企画部門から組織変更した政策局にデジタル室を作った。情報化と計画策定、DXを含めた推進とマイナンバー制度に取り組んでいる」(政策局企画政策室の原秀樹デジタル室長)。兵庫県西宮市は、「21年度に、情報管理部情報システム課からデジタル推進部デジタル推進課に部課名が変わった。そこに3人のDX専門チームができ、政策部門と一緒に推進している。4月にDXの推進指針を公表し、5月からは検討会を実施している」(デジタル推進部の南晴久デジタル推進課長)。

 兵庫県尼崎市は、「特にDX推進担当はいないが、行政改革を行う部署と連携を深めてDXを進めていく予定」(総務局の村田浩一情報政策課長)である。大分市は「企画部情報政策課のなかにDX専門の室が新設された。メンバーは6人で、重点取り組み項目のうちオンライン申請を中心に取り急ぎ進めているところ」(林氏)という。

 横浜市は4月にデジタル統括本部ができた。「業務は標準化や電子申請、マイナンバー、データマネジメント、人材育成など」(福田氏)。福田氏は副本部長に就いた。神戸市は情報化戦略部がデジタル戦略部に変わり、民間からの中途採用も増えて増員となった。「DX推進局長を置いて、データ連携部門とスマートシティ部門の職員を兼務させて拡張、吸収した。標準化やオンライン申請以外にも拡張していった」(木村氏)。

 浜松市は1年前にデジタルスマートシティ推進本部ができた。「DXは情報政策課と共同で進めていく体制」(村越氏)という。奈良市は4月に情報政策課にデジタル推進室ができた。「庁内横断でデジタル化のワーキンググループを組織して、次長級の職員に代表者になってもらっている。窓口の改革やワンストップサービスなど、いろいろと仕掛けていきたい」(中村氏)。

 政府は自治体DX推進の一環として、国が整備する「ガバメントクラウド」を市町村の基幹17業務のシステム基盤としても活用する計画で、システム移行に関する課題を検証する先行事業を公募して、国の費用負担で21年9月頃から開始する準備を進めている。戸田市の大山氏は「庁内のプライベート・クラウドとの連携などを試してみたい」と発言し、先行事業に関心がある自治体があるか尋ねた。東京都港区と浜松市、神戸市が公募に応じる意向を示した一方、北九州市は「参加したいが、実証からそのまま本番稼働へ移行するのが条件だと手を挙げにくい」(高尾氏)と迷いを明かした。