日経BPガバメントテクノロジーは2021年11月8日、「政令市・中核市・特別区CIOフォーラム」を開催した。年2回の開催となってから8回目となる。神戸市内の会場とオンライン参加を組み合わせたハイブリッド方式で、会場には21団体が来場し、オンラインだけでの参加は72団体だった。合計の自治体参加者は119人に上った。

写真●「政令市・中核市・特別区CIOフォーラム」を神戸市内の会場(ホテルオークラ神戸)とオンライン(Zoomウェビナー)のハイブリッド方式で2021年11月8日に開催。会場には21団体が来場し、オンラインのみで72団体が参加。合計の自治体参加者は119人。
写真●「政令市・中核市・特別区CIOフォーラム」を神戸市内の会場(ホテルオークラ神戸)とオンライン(Zoomウェビナー)のハイブリッド方式で2021年11月8日に開催。会場には21団体が来場し、オンラインのみで72団体が参加。合計の自治体参加者は119人。
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 今回のフォーラムでの主な関心事は、政府が整備し基礎自治体の基幹業務システムを標準化して25年度末までに移行させる計画が明らかになった「ガバメントクラウド」への対応。開催地である神戸市の筒井勇雄企画調整局DX担当局長(CIO)の開会挨拶に続く特別講演では、デジタル庁の圓増正宏デジタル社会共通機能グループ統括官付参事官付企画官が、計8団体を採択したガバメントクラウド先行事業の内容と今後の計画について説明し、質疑応答を行った(6ページ目の別掲記事を参照)。

 以降は間に協賛社セッションを挟みながら、午後は3団体が登壇。デジタル庁のガバメントクラウド先行事業に採択された神戸市が事業内容と現況を報告したほか、独自に自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する東京都町田市はクラウド前提の新しいシステム設計計画を紹介。大分市は、自治体DXの一環として取り組んでいる電子契約の実証事業について報告した。最後にガバメントクラウドやシステム標準化への対応について、会場参加者を中心に意見を交換した。

電子契約は財務系の電子決裁との連携もカギ

 大分市企画部の林浩一次長兼情報政策課長と情報政策課ICT推進室の峯田祐希主任は、立会人型電子契約サービスの実証実験を通じた電子契約に向けた取り組みについて報告した。

 まず、林氏が大分市の契約案件の状況を紹介。年間契約件数は約4万件で、物品契約が9割弱を占め、残りが工事、委託事業、コンサルタントである。金額ベースでは、物品、工事、委託がそれぞれ3割程度と均等で、年間の印紙額は全体で約2000万円という。

 入札については、建設工事と建設コンサルタントが電子入札、物品は電子見積もり、業務委託は紙の見積もりで行っている。これらの契約締結に関する事務はすべて紙ベースで実施しており、この契約締結を電子化する試みについて説明した。

林 浩一氏
林 浩一氏
大分市 企画部次長 兼 情報政策課長
峯田 祐希氏
峯田 祐希氏
大分市 企画部 情報政策課 ICT推進室 主任

 電子契約サービスの形態には、当事者型と立会人型の2種類があり、大分市は両方で実証実験を実施した。当事者型では、契約相手先として地元のIT企業の協力を得て、立会人型では職員を契約相手方と想定して実施した。

 当事者型電子契約サービスの流れは以下の通り。(1)自治体と契約相手方の双方が電子証明書を契約サービス提供サイトから取得、(2)サービス提供サイトで相手方が、自治体から事前に受領した契約書データに対して電子署名を付与、(3)自治体が相手方の電子署名完了の通知メールに従い、契約内容を確認して同様に電子署名を行う、(4)両者の電子署名完了によって契約書にタイムスタンプが付与されて、契約締結となる。

 一方、立会人型電子契約サービスの流れは次のようになる。(1)自治体が契約書データの作成と承認フローの設定を行う(相手方の承認フローも設定)、(2)電子署名を付与する場所と署名する担当者(決裁権者)を設定(相手方の署名者も設定)、(3)自治体からの通知メールによって相手方が契約内容を確認して承認、(4)相手方の承認メールにより内容確認・同意することで、サービス事業者の電子証明書に基づく双方の電子署名が契約書の指定場所に付与されて契約成立、となる。

 実証実験の結果、「当事者型は事前に電子証明書を取得することから、電子的な契約締結に不安感が少なく、金額が大きい、または厳格な契約と親和性が高い。一方、立会人型は簡易に締結できることから、簡易で件数の多い契約に向いている。相手方は印紙代が不要になるメリットがある一方、自治体ごとに電子契約サービスが異なる場合には管理が煩雑になる点が危惧される」(峯田氏)と所感を述べた。

 電子契約サービスで考慮すべき点としては、まずデータや通信などの機密性・完全性・可用性というセキュリティの観点を挙げた。データ保管や通信でどのような暗号技術を利用するか、電子署名とタイムスタンプ機能があるか、データセンターの仕様がISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)に準拠しているか、などである。

 電子契約サービスによる電子契約を実現するためには、さらに財務会計システムなどと連携可能かどうかの考慮も必要だという。財務会計システムが電子決裁に対応していないと、電子契約を実施しても紙による契約書をあらためて添付する必要が生じる。林氏は「庁内でさらに実証実験を重ね、関係部門と協力しながら法的観点やセキュリティ、財務会計システムとの連携などを検証していく。並行して、契約事務規則の見直しや運用ガイドラインの作成などに努める」と述べた。

 質疑応答では、同様に電子契約に関する実証実験を行っている秋田県由利本荘市総務部の今野薫行政改革推進課デジタル化推進班主査から、民間事業者の電子契約導入に対する関心について質問があった。林氏は実験に地元の事業者に参画してもらったことを説明したうえで、「大分県も独自に電子契約の導入を進めており、県と市でそれぞれ複数の異なるサービスを利用すると、民間事業者の作業は非常に煩雑になる。都道府県、近隣の市町村、民間事業者と意見交換しながら導入検討する必要がある」と答えた。