「i-Construction」とは、ICTの全面的な活用等の施策を建設現場に導入して、建設生産プロセス全体の生産性を向上させるとともに、魅力ある建設現場を目指す取り組みです。

 現在、人口構造に起因する労働力不足は、国内の全産業に共通する問題ですが、特に建設業界では深刻化が危惧されています。建設現場で働いている技能労働者約340万人(2014年時点)のうちおよそ3分の1にあたる約110万人が、今後10年間で高齢化などにより離職する可能性が高いためです。

 さらに、政府の「第4次社会資本整備重点計画」(2015年9月18日閣議決定)によると、公共インフラなどの社会資本整備は、人口減少以外にも、構造的な課題に直面しています。具体的には、「加速化するインフラ老朽化」や「切迫する巨大地震、激甚化する気象災害」「激化する国際競争」などです。このため発注者側の国や自治体には、社会資本のストック効果を最大限に発揮できるようにするマネジメントが強く求められている状況です。

 ところが、こうした事業環境にもかかわらず、建設業界では、「一品受注生産」「現地屋外生産」「労働集約型生産」などの業界特性を理由に、製造業で進められてきたライン生産方式やセル生産方式、自動化・ロボット化などの生産性向上策の導入が、これまで困難とされてきました。そうした状況が、最近のICTの技術革新によって、ようやく改善に向かおうとしているのが現状です。

国交省は3つの“トップランナー施策”を推進中

 建設現場の生産性は、同じ建設業界でも、工種によって大きく異なります。例えば、トンネル工事では、過去50年間で生産性を10倍程度にまで向上させてきました。一方、国直轄工事の技能労働者の約4割を占める土工やコンクリート工では、生産性がほぼ横ばいでした。このことから改善の余地は大きいと想定されます。

 そこで国土交通省は、土工およびコンクリート工を中心に、(1)ICTの全面的な活用(ICT土工)、(2)全体最適の導入(コンクリート工の規格の標準化等)、(3)施工時期の平準化を、先行的に実施する施策として“トップランナー施策”の名称で推進しています。それぞれを順に詳しく見ていきましょう。

施策1:ICTの全面的な活用(ICT土工)
 国交省が2008年から取り組んできたのが、施工段階においてICTを全面的に活用する「情報化施工」です。例えば、施工が完了した部分を測量する「出来形計測」には、従来は水糸・巻尺・水平器などを用いていましたが、施工管理データを搭載したTS(トータルステーション)と呼ぶ装置を用いたデジタル計測への移行を進めています。

 また測定データを、工事測量や設計データ・図面作成、出来形管理、出来形管理資料作成といった出来形管理作業にも活用することにも取り組んでいるほか、設計・施工計画の段階で作成した3次元データをパワーショベルなどの建設機械にデジタル表示するマシンガイダンス(MG)技術やそれを発展させて建設機械を自動制御するマシンコントロール(MC)技術の活用も進めてきました。

 こうした取り組みの結果、2008年度から2014年度の期間において、国直轄事業では1日あたりの施工量を1.5倍に拡大させるとともに、作業員の数を3分の1にまで削減できました。

 このように情報化施工では、施工段階における生産性の向上を確認できましたが、i-Constructionでは、施工段階だけでなく、その前後の測量、設計・施行計画、検査の各建設生産プロセスでもICTを活用することによって、工事全体の工数の削減や工期の短縮といった生産性の向上を目指します(図1)。例えば、ドローンを用いると、短時間で広い面積の3次元測量が可能になるほか、出来形の検査も省力化できます。

図1●ICTの全面的な活用
出所:国土交通省「i-Construction委員会報告書概要資料」(2016年4月11日)(http://www.mlit.go.jp/common/001137123.pdf)
[画像のクリックで拡大表示]