スーパーシティとは、従来のスマートシティや近未来技術実証特区などの取り組みの発展形として、「まるごと未来都市を作る」ことを目指した構想です。2030年頃に実現される未来社会での生活全般にまたがる包括的なサービスを、先行して都市に実装していくことを目指しています。スーパーシティ構想を実現するため、「国家戦略特別区域法の一部を改正する法律(スーパーシティ法)」が2020年(令和2年)5月27日に成立、6月3日に公布されました。

住民目線で「まるごと未来都市を作る」

 スマートシティ等の従来の取り組みとスーパーシティ構想の相違点は、個別サービスの実証にとどまらない包括的なサービスについて、住民目線で都市への実装を進める点です。

 従来の取り組みは、エネルギー・交通など特定の生活領域を対象にした実証実験が中心でした。提案者は技術力を持つ企業等の事業者であったため、生活の一部に限定された供給者目線の取り組みに陥りやすい側面がありました。

 こうした背景を踏まえ、スーパーシティ構想では次の3条件を満たす「まるごと未来都市」を世界に先駆けて実現することを志向しています(図1)。

図1●スーパーシティ構想の全体像
出所:内閣府「「スーパーシティ」構想について」(2020年7月)(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/supercity/supercity.pdf)
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(1)個別分野ではなく生活全般を支える複数のサービスが導入されていること
(2)最先端技術の一時的な実証ではなく、2030年頃に実現される未来社会での生活が加速実現されること
(3)技術開発・供給者目線ではなく住民目線でサービスを評価する仕組みが導入されていること

 スーパーシティ法では、合計10の生活領域から少なくとも5領域以上をカバーすることが期待されており、特定の分野・領域の個別実装にとどまらない構想が求められています(表1)。また、2020年に始まった新型コロナウイルスの感染拡大の状況を踏まえて、withコロナ・afterコロナの感染対策もカバーすることが期待されます。

表1●スーパーシティがカバーする10の生活領域
(1)移動 自動走行、データ活用による交通量管理・駐車管理、マルチモード輸送(MaaS)など
(2)物流 自動配送、ドローン配達など
(3)支払い キャッシュレスなど
(4)行政 パーソナルデータストア(PDS)、オープンデータプラットホームワンストップ窓口、APIガバメント、ワンスオンリーなど
(5)医療・介護 AIホスピタル、データ活用、オンライン(遠隔)診療・医薬品配達など
(6)教育 AI活用、遠隔教育など
(7)エネルギー・水 データ活用によるスマートシステムなど
(8)環境・ごみ データ活用によるスマートシステムなど
(9)防災 緊急時の自立エネルギー供給、防災システムなど
(10)防犯・安全 ロボット監視など
出所:首相官邸『「スーパーシティ」構想の実現に向けて最終報告』(2019年2月14日)を基に作成(https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/supercity/saisyu_houkoku.pdf)

 具体的な例として、運転免許を返納した後期高齢者が数多く在住する自治体では、タクシーの台数減少と料金負担の大きさから、通院を断念する高齢者の増加が課題となっています。スーパーシティ構想では、複数のサービスを連携させることで、こうした社会課題の解決を目指します。スーパーシティ構想の枠組みの中で、行政やタクシー事業者による配車・決済機能を具備したボランティア・タクシー事業の展開、配車予約と病院の通院予約との連携などを複合的に進めることで、社会保障費の抑制や地域交通の合理化が期待できます。

 スーパーシティには、グリーンフィールド(新規開発)型とブラウンフィールド(既存都市開発)型の2パターンが想定されています。

 グリーンフィールド型とは、都市の一部地域や工場跡地などを新規に開発し、そこに新たに住民を集める新規開発型の手法を指します。対するブラウンフィールド型は、既に住民が生活する都市で、住民の合意を形成しつつ、必要な都市開発やインフラ整備を追加的に行う、既存都市開発型の手法を指します。

 グリーンフィールド型の特徴として、都市計画をゼロから設計できるため、先端技術をまとめて実装できるほか、既存の住民が存在しないため合意を得られた住民のみを新規に受け入れられる利点があります。一方で、ブラウンフィールド型は、住民のネットワークや地域に顕在化した課題が既に存在するため、課題解決型のアプローチで先端技術の実装を行える利点があります。