自治体で導入が広がるQRコード方式とは補完関係

 COCOAの公開に先駆けて、自治体では独自に、QRコードを活用して感染者と濃厚接触した可能性を市民に通知するシステムを導入する取り組みが広がりました。

 例えば、神奈川県が20年5月26日に導入した「LINEコロナお知らせシステム」では、施設や店舗にQRコードを掲示して、訪れた人がスマートフォンで読み込むと、場所や日時が県のシステムに記録されます(図3)。感染者が出た場合に、同じ時間帯に店にいて、濃厚接触の可能性があると保健所が判断した人に対して、保健所に連絡するよう促す通知が、LINEのアプリで送られる仕組みです。同様の取り組みは、クラスター(集団感染)対策や施設への休業要請を担う都道府県を中心に広がっています。さらに、市区町村が独自に導入する動きもあります。

図3●神奈川県「LINEコロナお知らせシステム」の仕組み
図3●神奈川県「LINEコロナお知らせシステム」の仕組み
出所:神奈川県「感染防止対策取組書・LINEコロナお知らせシステム」(http://www.pref.kanagawa.jp/docs/ga4/corona/osirase.html)
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 QRコード方式は、施設や店舗に掲示したQRコードを利用して来訪者を把握するため、特定施設でしか濃厚接触を把握できません。COCOAのBluetooth方式と比較すると、効果を上げる場面は限定的ではありますが、施設内で発生するクラスター対策には適しているといえます。COCOAと各自治体のQRコード方式の双方の活用が浸透すれば、相互補完によって一層の感染拡大防止の効果が期待できます。

各国の取り組みはプライバシーへの配慮に差異

 今回の新型コロナウイルス禍では、世界各国でスマートフォンを活用して市民の行動履歴や接触者履歴のデータを収集・分析する取り組みが行われています。ただし、そのための個人に関する情報(パーソナルデータ)の収集に関しては、公衆衛生学上の要請と個人のプライバシー保護をどのようにバランスさせるか、各国の姿勢は異なっています。

 スマートフォンを活用した接触把握方法としては、GPS(全地球測位システム)等を用いて直接的に個人の位置情報を収集する方法と、Bluetooth等を用いて陽性者との接触を把握する方法の大きく2つに分かれます。さらに、氏名や電話番号などの個人情報を取得するか、また行動履歴や接触者履歴のデータを中央サーバーで集中管理するかという観点で分類できます()。

表●接触確認アプリの国別比較
表●接触確認アプリの国別比較
出所:内閣官房 新型コロナウイルス感染症対策 テックチーム「第3回会合」事務局提出資料(2020年5月8日)(https://cio.go.jp/sites/default/files/uploads/documents/techteam_20200508_02.pdf)
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 ドイツは当初、中央サーバー型のアプリの導入を検討していましたが、プライバシー侵害の懸念があると大規模な批判を受けたため、アップルとグーグルのAPIを採用し分散型に変更しました。英国も同様に、独自の中央サーバー型の接触追跡アプリの開発を進めていましたが、20年6月に方針を変更し、アップルとグーグルが提供するAPIを採用し分散型で実現すると発表しました。

 また、アップルとグーグルは20年9月2日、各国の公衆衛生当局がより利用しやすくなるよう、アプリを独自開発しなくても、感染の追跡とアラート送信が可能になる「Exposure Notifications Express」という仕組みを発表しました。これにより、アプリを開発する余裕のない国や、アプリをまだ導入できていない地域でも、接触確認の仕組みを迅速に展開できるようになる見込みです。