デジタル社会形成基本法の構成とIT基本法からの追加項目

 こうした論点の方向性に沿って、既存のIT基本法を見直したのが、新しいデジタル社会形成基本法です。同法は全6章からなり、太字部分が従来のIT基本法に追加した項目です(表2)。

表2●デジタル社会形成基本法の構成
構成 該当箇所 記載項目
第1章 総則 第1条
・第2条
・目的
・定義
第2章 基本理念 第3条
-第12条
・全ての国民が情報通信技術の恵沢を享受できる社会の実現
・経済構造改革の推進及び産業国際競争力の強化
・ゆとりと豊かさを実感できる国民生活の実現
・活力ある地域社会の実現等
国民が安全で安心して暮らせる社会の実現
・利用の機会等の格差の是正
・国及び地方公共団体と民間との役割分担
個人及び法人の権利利益の保護等
情報通信技術の進展への対応
・社会経済構造の変化に伴う新たな課題への対応
第3章 国、地方公共団体及び事業者の責務等 第13条
-第19条
・国及び地方公共団体の責務
事業者の責務
・法制上の措置等
・統計等の作成及び公表
・国民の理解を深めるための措置等
第4章 施策の策定に係る基本方針 第20条
-第35条
・施策の一体的な推進
・世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成
多様な主体による情報の円滑な流通の確保
高度情報通信ネットワークの利用及び情報通信技術を用いた情報の活用の機会の確保
・教育及び学習の振興
・人材の育成
経済活動の促進
事業者の経営の効率化、事業の高度化及び生産性の向上
生活の利便性の向上等
国及び地方公共団体の情報システムの共同化等
国民による国及び地方公共団体が保有する情報の活用
公的基礎情報データベースの整備等
公共分野におけるサービスの多様化及び質の向上
サイバーセキュリティの確保等
・国際的な協調及び貢献
・研究開発及び実証の推進
第5章 デジタル庁 第36条 デジタル庁
第6章 デジタル社会の形成に関する重点計画 第37条
・第38条
デジタル社会の形成に関する重点計画の作成等
重点計画と国の他の計画との関係
※「記載項目」欄の太字は、従来のIT基本法に追加した項目
出所:参議院「デジタル社会形成基本法案」(2021年4月6日)(https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/204/pdf/t0802040262040.pdf)

 特に自治体に対する影響が大きいのは以下の項目です。

国及び地方公共団体の情報システムの共同化等(第29条)
 これまでは各省庁および自治体が個別に情報システムを整備していたため、国民の利便性や行政運営の簡素化・効率化・透明性が阻害されていました。そこで、各省庁や自治体の情報システムをクラウドサービスにより共同化し、マイナンバーを用いた情報連携を促進します。共同化は自治体情報システムのあり方を大きく変更する取り組みになります。

国民による国及び地方公共団体が保有する情報の活用(第30条)
 国や自治体によるサービス提供だけではおのずと限界があるため、国や自治体が保有するデータを自ら活用するだけでなく、オープンデータとして公開することにより、民間による新たなサービスの提供が期待できます。オープンデータ化は、公共分野におけるサービスの提供主体が国や自治体だけでなく民間にも広がるという点で重要な取り組みです。

公的基礎情報データベースの整備等(第31条)
 これまで各省庁や自治体では情報システムを個別に構築していたため、各システムのデータ連携が不十分で重複投資となっていました。そこで、各省庁や自治体で広く利用されている情報を公的基礎情報データベース(ベース・レジストリ)として整備し、ワンスオンリー(一度提出した情報は、二度提出することを不要とすること)の実現や、システム重複投資の削減、社会の情報基盤の整備を目指しています。ベース・レジストリの整備は、国や自治体のデータ保有のあり方に影響する重要な取り組みです。

デジタル庁(第36条)
 政府のデジタル改革を強力に推進するための組織として、新たに内閣直属の組織として、デジタル庁が設置されます。デジタル庁の業務には、地方共通のデジタル基盤の整備として、全国規模のクラウド移行に向けた標準化・共通化に関する企画と総合調整業務が含まれます。このため、自治体の情報システムの整備に多大な影響を及ぼす組織になります。

 デジタル社会形成基本法は、IT基本法と比較すると、データの整備・流通・活用に関する事項を大幅に強化しています。また、政府・自治体だけでなく、民間の事業者の役割も求めています。

 この法律が有効に機能するには、同法が定める重点計画の策定やデジタル化を強力に推進するデジタル庁の体制整備、関連する法律の施行など、記載されている取り組みを具体化する必要があります。そのためには、政府・自治体・事業者それぞれが役割を果たさなければなりません。