開発に加えて設計、実装、運用もカバー

 ノーコード/ローコード開発は、新しい概念というわけではなく、ソースコードを書かずにアプリケーションを開発するコンセプト自体は以前からあります。

 40~50年前には日本国内でCASE(Computer Aided Software Engineering:ソフトウエアの開発・改修時に使用するソフトウエア)ツールやRAD(Rapid Application Development:高速アプリケーション開発)など、システム開発の局所的な部分を自動化する「プログラム生成型」のツールが相次ぎ登場しました(図5)。

図5●ローコード開発プラットフォームの分類と機能
図5●ローコード開発プラットフォームの分類と機能
出所:日経コンピュータ 2020年7月23日号の特集の図を基にNTTデータ経営研究所が作成
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 これらのツールの多くは、アプリケーションの画面デザインや業務ロジック、データ構造を設計する機能を一通り備えています。しかし、自動生成後の画面や業務ロジック、データベースを連携させるには別途コーディングが必要なケースもあり、自動化できる領域が限られていました。

 その後、アプリケーションを統一的に開発する「統合環境型」のツールが登場しました。GUIベースの操作で、モデル化されたアプリケーションの部品やデータ構造などを組み立てるように開発するものです。日本国内では超高速開発ツールとして2010年代前半から広まりました。GUIを使用した開発のしやすさから、個別システムだけでなく、業務パッケージソフトの開発にも活用されるようになりました。ツールによっては、300種類以上のパッケージソフトの開発に適用されている事例もあります。

 そして現在、ノーコード/ローコード開発はさらに進化し「プラットフォーム型」が台頭しています。「プラットフォーム型」という名称は、ツールがシステムのライフサイクル全般を支援するアプリケーション基盤になっている点に由来します。設計から実装、テスト、運用までを網羅的にカバーしており、本番稼働後のバージョン管理や配信管理、性能監視、利用者からのフィードバックといった保守開発・運用に必要とされる機能も備えています。

開発の迅速化とコスト削減、業務効率化がメリット

 ノーコード/ローコード開発のメリットは、主に(1)開発期間の短縮、(2)開発コストの削減、(3)業務の効率化の3点が挙げられます。

(1)開発期間の短縮
ノーコード/ローコード開発ではGUIの操作でアプリケーションの機能を組み立てることで、ソースコードが自動で生成されます。このため、ソースコードを書く時間を最低限に減らすことができます(図6)。加えてノーコード/ローコード開発ツールの中にはテストの自動化や、ドキュメントを自動生成できるものもあります。これらの機能を活用することで作業を大きく効率化でき、開発期間の短縮とスピーディなシステムの利用が可能となります。

図6●従来型開発とノーコード/ローコード開発との開発期間の比較
図6●従来型開発とノーコード/ローコード開発との開発期間の比較
出所:NTTデータ経営研究所が作成
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(2)開発コストの削減
 ノーコード/ローコード開発ツールの活用により、開発期間の短縮が可能となり、これにより人件費が抑えられ、開発コストの削減につながります。ノーコード/ローコード開発ツールを利用すると、業務担当者にもアプリケーションの開発が可能となるため、組織内での内製化が図れます。例えば、「今までシステム開発をベンダーに外注していたが、ノーコード/ローコード開発を機に組織内で開発するようになった」ケースが該当します。開発ベンダーに依存していたスキルやノウハウが自組織内に蓄積される副次的な効果も見込めます。

(3)業務の効率化
 ノーコード/ローコード開発ツールを使用すると、業務担当者が手軽にアプリケーションを開発できるようになります。これにより、業務担当者自らが業務プロセスを見直しやすくなります。PC業務を自動化するRPAは業務プロセスそのものを固定化するため、安易にRPAに頼ってしまうと業務プロセスそのものの効率化につながらないリスクがあります。RPAを局所的に活用しつつ、ノーコード/ローコード開発ツールを利用しながら業務プロセスの見直しを進めていくと、業務の効率化の効果を一層得やすくなります。