デジタル庁は、従来の行政のデジタル化における課題を解決するために、デジタル社会の形成に関する司令塔として、『誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化を。』というミッションを掲げ、2021年9月1日にデジタル庁設置法に基づき正式に発足しました。

 2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、特別定額給付金や雇用調整助成金の支給、感染者の報告などの行政事務が混乱。同年9月に発足した菅政権は、国民の利便性を向上させ行政事務を効率化するデジタル化の推進を最重要政策の一つに位置付け、同年12月のデジタルガバメント閣僚会議でデジタル庁を設置する基本方針を決定しました。政府は急ピッチで法制面と組織体制面の整備を進め、政権発足からわずか1年で新しい行政組織としてデジタル庁の設置にこぎ着けました。

過去20年の取り組みもコロナ禍で課題が相次ぎ露呈

 2000年以降に政府が掲げた行政のデジタル化(IT化)に関する戦略を振り返ると、行政手続きの電子化を目指した「e-Japan戦略」(2001年)に始まり、「いつでも、どこでも、誰でもITの恩恵を実感できる社会の実現」を目指した「IT新改革戦略」(2006年)、行政サービスのワンストップ化の実現を目指した「世界最先端IT国家創造宣言」(2013年)がありました。「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進計画」(2016年)では、対面・書面手続きの原則見直しなどの行政手続きのオンライン化の徹底を目指してきました(図1)。

図1●2000年以降の政府の主なデジタル化戦略
図1●2000年以降の政府の主なデジタル化戦略
出所:NTTデータ経営研究所が作成
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 しかし、長年にわたって様々な施策を実施してきたものの、目標が未達の状態となっているものもあり、更なる改革の必要性が高まっていました。

 2020年1月に日本を襲った新型コロナウイルス感染症への対応として、政府は特別定額給付金の管理業務のための「特別定額給付金管理システム」や、新型コロナウイルス感染症の陽性者との接触の可能性を確認する「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)」、保健所の情報管理業務の負担を軽減するための「新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム(HER-SYS)」などを非常に短い期間で開発しました。

 ところが、これらの開発を進めていく過程で、国と自治体との間の連携不足により、現場業務の運用がシステムに反映されなかったことや、担当省庁に十分な知識・スキルを持ったIT人材が不足していたことなど、コロナ禍への対応を契機に行政のデジタル化における課題が次々と浮き彫りになりました。

 IT人材の不足に関しては、コロナ禍以前から専門性の高い人材を民間領域や学術領域から政府CIO(内閣情報通信政策監)や政府CIO補佐官といった役職で採用してきましたが、職務範囲が広く、専門性の発揮が難しいという課題もありました。