住民1人10万円の特別定額給付金や雇用調整助成金の申請手続き・給付事務で遅れや混乱が生じるなど、新型コロナウイルスへの緊急対応において、行政分野のデジタル化やオンライン化の遅れ・不具合が随所で露呈した。コロナ禍で明らかになったデジタル・ガバメントの課題と今後の改善策について、政府のIT総合戦略室長でもある三輪昭尚内閣情報通信政策監(政府CIO)に聞いた。(聞き手は本誌編集長、井出 一仁)
三輪 昭尚(みわ・あきひさ)氏
1974年京都大学工学部建築学科卒業後、大林組に入社。83年米イリノイ工科大学大学院卒(経営工学・修士)。2003年大林組IT戦略企画室長、04年大林USA代表取締役社長。以後、大林組常務取締役原子力本部長、技術本部長、情報システム担当などを歴任し、10年取締役専務執行役員に就任。18年4月内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室の情報通信技術(IT)顧問、同年6月大林組顧問(常勤)に就き、同年7月から現職。政府CIOとしては2代目となる。京都府出身。(写真:新関 雅士、以下同じ)

新型コロナでの緊急経済対策では、給付金の支給遅れなど、国民が行政のデジタル化に不安を抱く事案が相次ぎました。

三輪 一律10万円の特別定額給付金は、補正予算が成立した翌5月1日にはマイナポータル注1)からのオンライン申請の受け付けを可能にしました。初日から749自治体が受け付けを始め、7月半ばまでに全1741市区町村の98.2%、1709団体が合計213 万件の申請を受け付けて、支給を進めています。最初の1カ月は、申請受け付けも給付もオンライン申請の団体の数が郵送方式を上回りました。

注1)マイナポータル
マイナンバー制度の導入に併せ2017年11月に本稼働した個人向けのポータルサイト。マイナンバーカードを読み取れるスマートフォンなどから利用する。子育てワンストップ、法人設立ワンストップ、マイナンバーカードの健康保険証利用の申し込みなどのサービスを提供中。

 オンライン申請の受け付けを中止・停止する自治体が相次いだと報道されましたが、その数は108団体です。残りの1601団体はオンライン申請の受け付けを続けています。

オンラインでの申請受け付けを続けた自治体でも、申請情報を印刷して住民票情報と目視で照合するなど、事務負荷に苦しみました。

三輪 自治体での事務処理をスムーズにするため、政府は当初からフォローしています。具体的には課題を3つに整理し対応を進めました。まず、申請情報を紙に印刷しないでデータのまま処理できるように、複数の申請データを自治体職員が一括ダウンロードできるボタンを自治体向け画面に追加し、さらにそのデータから一覧表を作成するツールを提供しました。これにより、自治体が保有する給付対象者リストとの照合を容易にしました。

 2つめの課題は、申請情報に含まれる世帯主(申請者)と世帯員を、給付対象者リストと迅速・確実に照合することでした。このため、申請者のマイナンバーカードの電子証明書番号注2)を申請情報に含めて自治体に提供することにしました。

注2)電子証明書番号
マイナンバーカードのICチップ内に格納された利用者証明用電子証明書の発行番号。マイナンバーとは異なるものであり、用途に関してマイナンバー法による制約はない。