デジタル庁の発足やガバメントクラウドの推進、国による「デジタル社会の実現に向けた重点計画」の発表など、自治体を取り巻くデジタル化の環境は刻々と変化している。自治体のDXへの取り組みや、国の施策との関係、そして実際に自治体のデータ活用の動向はどうなっているか。武蔵大学教授で地域情報化や電子行政の動きに詳しい庄司昌彦氏に、自治体のデジタル化の現状や課題を尋ねた。(聞き手は、本誌編集長 菊池 隆裕)

庄司 昌彦(しょうじ・まさひこ)氏
庄司 昌彦(しょうじ・まさひこ)氏
中央大学卒業後、国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)研究員を経て2019年より現職。総務省の自治体DX検討会や住民記録システム標準化検討会の座長、自治体セキュリティポリシー改定検討会の構成員などを務める。45歳。(写真:加藤 康、以下同じ)

デジタル・トランスフォーメーション(DX)の流れは自治体にも及んでいます。最近の自治体DXの動きをどう見ていますか。

庄司 自治体の中には、自発的にDX担当の組織を立ち上げたり、計画を立てたりする動きが始まっています。自治体のDXの第一歩としてはいい動きだと思います。

 一方で自治体の方と話すと、「先進事例を教えて下さい」と言われますが、私は事例に踊らされないでほしいと伝えています。DXは、ソフトやサービスを買って導入しておしまいではなく、目の前の仕事について良いやり方がないかを自分の頭で考えることが大事です。先進事例を真似るのではなく、改革のマインドやデジタルの仕事の仕方をいかに自分たちのものにするか、自分たちで考えて試行錯誤することを意識する必要があると感じます。

 民間でもDXに成功している企業は、組織をIT企業のように変えています。航空業界ではセルフサービス化が進み、銀行でも応対は窓口からスマホやパソコンに変わっています。制度を分かっている人がきちんとITを活用する必要があり、自治体でも組織やプロジェクトをIT企業型に変えていく必要があります。

デジタル庁発足から半年、ここまでの評価と今後の課題は。

庄司 外から見た印象ですが、体制づくりをしながら多くの業務を抱えてトップスピードに入ったため、デジタル庁はまだ混乱しているように見えます。そして最初の勢いが弱まる可能性を懸念しています。

 例えば、2022年1月に自治体専用の回線「総合行政ネットワーク(LGWAN)」注1)で障害が発生し、コンビニエンスストアでの住民票などの交付などに影響がありました。デジタル庁が所管する地方公共団体情報システム機構(J-LIS)注2)が運営するネットワークですが、即時の情報公開などでは、司令塔として課題が残りました。各省の調整をするだけではなく、総務省・J-LIS・自治体の間の連携や、国民やメディアへの情報提供ではデジタル庁が積極的なイニシアチブをとる必要があります。

注1)LGWAN
自治体を相互に接続する行政専用ネットワーク。
注2)地方公共団体情報システム機構(J-LIS)
住民基本台帳法やマイナンバー法が規定する自治体の事務を代行し、システムを運用する組織。

 もう1つ懸念があります。前菅義偉内閣の時点ではデジタル庁が中央集権的にトップダウンで遂行することに抵抗もありましたが、長年の課題が山積したデジタル行政改革に取り組もうという勢いもありました。しかし、岸田文雄内閣になり、中心施策にデジタル田園都市国家構想が加わり対象が広がったことで、デジタル行政改革へのパワーが分散してきた印象があります。

 私は自治体のシステム標準化や自治体DXは10年かかる大仕事だとずっと言ってきました。描いた絵を具体化するのはこれからですから、政治家も各省もしつこく粘り強く10年やりきってほしいと思っています。