特別報告 熊本地震でWi-Fiなど無線が活躍
島田 政次氏
熊本県 企画振興部 情報企画課 情報企画監

 熊本県の島田政次情報企画監が、4月の熊本地震での情報企画課の対応について報告した。同地震では、死者50人、約2000人のけが人が発生。建物被害は、一部損壊を含め16万棟に及ぶ。避難所は最大時855カ所(18万人避難)で、8月下旬でも24カ所(1000人以上避難)を運営している。

 島田氏はまず、全国の自治体からの支援に感謝を述べた。「短期派遣を中心に、8月までで延べ4万7000人の支援をいただいた。8月末時点も各市町村に125人の長期派遣(1カ月超)がある」。続いて、4月14日に起こった前震(マグニチュード6.5)と16日の本震(同7.3)の対応を説明した。

 「前震は午後9時26分で、県庁では震度6程度。近くにいたので午後10時過ぎに登庁した。県庁に災害対策本部が設置され、相応の数の職員が登庁した。職員の安否確認システムはなく、携帯電話で確認した」(島田氏)。庁舎の一部フロア、出先機関、県立学校などで通信障害が発生したが、翌15日の夜までにすべて復旧。カスタマエンジニアが来庁し、地震でずれたホストコンピュータの位置を修正した。

 本震の発生は16日午前1時25分。島田氏は自宅にいた。「天地がひっくり返ったような揺れを感じた。自転車で真っ暗な道を走って2時半に登庁。停電で非常電源に切り替わっていた。職員の安否はほどなく確認できた」。

 サーバーやネットワーク機器の動作は正常だったが、停電で庁舎の一部フロアでネットワークが不通となり、出先機関でも通信障害が多発した。商用電源が午前5時に復旧し、サーバー群はすぐに稼働。停電した阿蘇地域の出先機関以外は、午後6時に利用可能になった。「ホストは前震で電源を切っていたのが幸いし、免震台座からのずれを修正して点検した後、19日からフル稼働できた」という。

 17日からは復旧作業の後方支援に追われた。他自治体からの応援職員の到着に合わせ、PCやプリンタの貸し出しに対応。27日からは被災者台帳システムの提供を始めた。市町村が行う住家被害の認定調査、罹災証明書の発行、生活再建支援などを管理・支援するシステムで、15市町村が利用した。

 「防災担当部署への配備も含め、PC予備機を100台払い出し、OA研修室の30台も“開放”。LANケーブルやマウスが不足し調達した。県職員が出先機関で業務を行うケースが想像以上に多く、付随して発生したネットワークの設定変更依頼にも対応した。業者から無償で112台のPC貸与の申し出があり、とても助かった」と述懐する。

 14年に県が設定した「IT-BCP」(システムの業務継続計画)とのチェック表も披露。サーバーやPCだけでなく、人員や電力についても設定してある。島田氏は「幸い火災もなく空調設備が稼働したので、大きな障害は起こらなかった。上水道は一時止まったが、トイレが問題なく利用できたのが大きかった。応援を多数迎えたので、故障していたら大変だった」と振り返る。

 最後に島田氏は、無線LANの災害用統一SSID「00000Japan」ルーターが避難所に配置され無料開放されたことと、携帯電話事業者がデータ通信容量の制限を解除したことに触れ、「無料Wi-Fiは震災ピーク時に顕著に利用され、容量制限の解除は通信がスムーズになり、非常に助かった」と感謝。必要を痛感した派遣職員向けのリモートアクセス環境は、年度内に整備する。