講演 スマホとともに浸透するAIを行政は無視できない
狩野 英司氏
行政情報システム研究所 調査普及部長 主席研究員
[画像のクリックで拡大表示]

 行政情報システム研究所の狩野英司氏は、2016年に公表した調査研究報告書などを基に、行政でのAI活用の可能性について講演した。

 すでに民間で多様な分野に導入されている点を指摘したうえで、「申請書類の認定判断に必要な情報の表示、大量のメールの中から不正行為の証拠や予兆を検知するなど、住民接点からバックオフィスまで行政への適用のハードルは高くない」と分析した。

 ただし、AIには得意不得意があり、対象の絞り込みが必要という。「現状のAIが得意なのは分類・情報抽出、評価・判定、マッチングなど、相当量のデータが存在する前提で、目的やルールは明確だが処理基準が明確に設定しにくい業務」。行政特有のハードルとしては、データ整備、現場理解、予算化、人材確保の4つの壁を挙げた。

 国や自治体でのAI活用先進事例も紹介した。国では実証事業へ進む段階に来ており、「特許庁では、2017年度は問い合わせ対応業務に絞り込んで調査・実証を実施予定」という。自治体の例では、川崎市・掛川市の住民向けチャットボット「AIスタッフ」や、道路舗装の損傷を自動抽出する千葉市の実証実験(深層学習による異常検知)などを紹介。「まだ実際の業務での定常運用はできていない」とした。

 今後の潮流として、(1)浸透、(2)民主化(誰もが利用できる環境)、(3)API化(「作り込み」から「組み合わせ」へ)、(4)コモディティ化を挙げた。加えて「スマートフォンの機能などの形で、既にAIは住民の生活に浸透している。商品検索、レコメンド、音声アシスタント、画像認識、SNSなどだ。行政が無視していいわけがない。オープンデータ同様、スモールスタートで成功体験を積むことが重要」と力を込めた。

 最後に「もちろんAIが決めたからでは住民は納得しないし、AIが判断を誤っても責任は人間しか負えない。AIに意思はないので、優先順位も決められない。しかし今後、AIがあらゆる業務・サービスに浸透していくのは確実で、人材育成も含め行政での活用可能性を真剣に検討すべき」と訴えた。