講演役割分担が前提では行政サービスは変革できない
平本 健二氏
内閣官房 政府CIO上席補佐官
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 2017年5月に「デジタル・ガバメント推進方針」が決定された。かつては「電子行政」と言っていたが、現在は世界中で「デジタル・ガバメント」と呼ばれるようになった。

 中身も大きく変わっている。デジタル化は、地上の道路から空へとフィールドが変わるようなもの。スピード、操縦方法、ルールが違う新しい世界へ向かっていると考えてほしい。「Disruptive Technology(破壊的な混乱を起こす技術)」という言葉があるが、今まさにこの状況にある。

 世界最先端の行政サービスを実現するために、利用者中心の新しい行政が必要だ。これまでは役割分担と責任分界点を前提にベストを尽くす分業制だったが、これからは全体を見渡して流れの中でうまくリレーしてサービスを提供することが必要になる。

 つまり、サービスデザインから入って、エンド・ツー・エンドでの電子行政を実現する。これには、プラットフォームやデータなど可能な限りの共通化・標準化によるコスト抑制はもちろん、自前主義から脱却してクラウドなど民間サービス内に行政サービスを組み込むこと、「産官学行民」で協働し自分だけで考えないことが必要だ。

 現在のデジタル化は、役所と住民とのインタフェース部分に注力している。今後は、手書き認識技術やAI、ドローン、FinTechなどの活用で、入り口から出口まで一気通貫でのデジタル化が必須である。これがないと、データ分析やワークスタイル変革が実行できない。変革の一例を挙げると、デジタル申請を基本とし、押印・署名は原則として省略する、FinTechの活用により公金収納をネットで全部終わらせることなどだ。実現すれば、驚くようなスピードアップとサービス向上が実現する。

 そのためには、自治体もベンダーもマインドセットの変更が急務だ。「検討が必要なので時間がかかる」などと言っていたら、進歩から取り残される。従来は最も遅れている部分への対処を基本に施策を決めていたが、今後は最前列に判断の基準を移し、乗り遅れる人をITでサポートすべき。行政こそが、社会活動を加速するプラットフォームにならなくてはいけない。

 デジタル・ガバメント推進方針に関しては、基本計画を年内に策定。官民連携を実現するプラットフォームを作り、オープンデータも並行して進めていく。利用者中心の行政サービス改革、情報提供のあり方の見直し、データ流通を促進する環境の整備、データ活用インタフェースの整備、プラットフォームの共用化と民間サービスの活用などが、主な内容となる。

 今後は、「サービスデザインガイド」の整備、事例集の作成、マスターデータやコードのガイド整備、押印・添付書類の見直し、申請書式の統一などを進めていく。特に事例集はアンケートでも要望が多い。電子行政分科会のサイトでも事例を提供しているが、より分かりやすいものを作りたい。マスターデータやコードに関しては、「政府CIOポータル」にベータ版を掲載している。

 デジタル社会に向かうための施策、マイナンバーや法人番号、公共クラウド、セキュリティクラウドなどが出そろった。20~30年先を見て必要な社会基盤を考え、国では現在、英語の会社名や振り仮名を登録できる仕組みの導入に取り組んでいる。ITだけでなく制度の見直しも必要だ。また一度登録した法人情報を別の申請に活用できるよう、申請書の統一も進めている。まずは省レベル、次に政府レベルと段階を踏んで進める。デジタルやクラウドでつながることを前提とした、基盤つくりの一例である。(談)