RPAやAIの活用は民間企業だけでなく、自治体にとっても重要なテーマだ。その現状や課題について、日経BP社が開催した会合「都道府県CIOフォーラム(2018年2月6~7日)」での講演や発言から明らかにする。

 2日目午後は、内閣官房の座間敏如政府CIO上席補佐官が、2018年1月に政府が決定した「デジタル・ガバメント実行計画」について講演。「今後は政府・地方・民間全てを通じたデータの連携、サービスの融合を実現し、デジタル・ガバメントの実現を目指したい」と力を込めた。

座間 敏如氏
内閣官房 政府CIO上席補佐官 (写真:新関 雅士、以下同じ)
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 実行計画での行政サービス改革の柱は、(1)行政サービスの100%デジタル化、(2)行政保有データの100%オープン化、(3)デジタル改革の基盤整備─である。

 具体的な施策として、(1)はデジタルファースト(手続きオンライン原則の徹底)、ワンスオンリー(バックオフィス連携、添付書類の撤廃)、コネクテッド・ワンストップ(引っ越し・介護・死亡相続での民間連携・ワンストップ化)、(2)はオープンデータ・バイ・デザイン(公開前提の業務・システム設計・運用)、(3)は行政データ連携標準(日付・住所などの語彙、コード、文字の標準化)を挙げた。

 サービスデザイン思考については、「デザインで行政を変えると言われて、私自身10年前は理解できなかった」と述懐。「体験に照らせば、パスポート取得に数カ所に出向くことや、住民票を役所で取得して再度役所に提出するのは、そもそものデザインがおかしいせいではないか」と疑問を投げかけた。

ガイドラインはいつ出るのか

 講演後は意見や質問が相次いだ。静岡県の黒柳正巳電子県庁課長は、「(デジタル・ガバメントは)形が見えてこない。予算を考えると、あまり稼働しないものをシステム化していいのかと思う」と述べた。

黒柳 正巳氏
静岡県 経営管理部 情報統計局 電子県庁課長
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 座間氏は「デジタル化で見えなかったものが見えてくる。例えば、粘り強い人だけが答えるアンケート調査は当てにならない。デジタル化すれば、途中でやめた人も追跡でき、実態に即した結果が得られる。方法論としては(1)内部改革は負担が大きいのでサイトデザイン変更などやりやすいところから始める、(2)まず住民との接点、例えば窓口待ち時間などを定量化してサービス向上につなげるといい」と述べた。

 奈良県の二見氏は「行政計画の作成は視点が上から下になるが、サービス利用者重視だと視線が反対向きになる。計画をまとめる際に衝突しないか」と疑問をぶつけた。座間氏は「衝突はあるだろうが、やり遂げなければならない。デジタル・ガバメントは2014年ころに欧州で唱えられたが、本音は政府がサービスを全て提供するのはもう無理というギブアップ宣言だ。だからデジタル化・オープン化して民間と連携する。資金が尽きればサービスを提供できなくなるので、その前に実行する必要がある」と説明した。

 東京都の原田一紀電子自治体連携担当課長は、「どういう基準で電子文書を認めるか、個人認証は印鑑でなくID/パスワードでよいか、ぜひガイドラインを示してほしい。手続き所管部署として基準を示せないと庁内の説得が難しい」と訴えた。

原田 一紀氏
東京都 総務局 情報通信企画部 企画課 電子自治体連携担当課長
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 座間氏は「技術的・業務的な面はタスクフォースで議論している。現在、電子署名が障害となり普及しないe-Tax※1の認証をID/パスワード方式に改修しており、他の認証手続きの見直しにも踏み込む。提言は2018年3月に出すが、具体的に見直す箇所やガイドラインの確定は、その次の課題」と答えた。

※1 e-Tax
国税電子申告・納税システム。利用時にマイナンバーカードのICチップに内蔵された電子証明書が必要