――カーオーナーが得をすることを考えるべきということか。

PwCコンサルティング Strategy&の北川友彦ディレクター


北川 そうだ。コネクテッドを活用すれば、カーオーナーが得するサービスはいろいろ作れる。例えば、走行距離や運転特性などの利用実績で保険料を決める「利用ベース保険」(UBI)もその一つと言える。車両の故障予知やメンテナンスの最適化を実現するサービスもあるだろう。アラームが表示されたタイミングでメンテナンスを実行すると全体としてメンテナンス料金が安くなるようなサービスを作れば、ユーザーは受け入れてくれる。

このような新たな事業が登場すれば、その新サービスでの売上を獲得する誰かが、カーオーナーに代わってコネクテッドの料金を支払ってくれるかもしれない。


――自動運転は交通事故削減のほか、交通弱者支援、交通渋滞緩和、CO2(二酸化炭素)排出削減など、さまざまな社会課題を解決するソリューションという側面もある。この社会課題解決でもコネクテッドの利点があるのではないか。


白石 日本の様々な場所で、公共交通機関がなくなって困っている人がたくさんいる。だから現実的なソリューションが必要になる。欧州では、公共交通機関として自動運転車を活用しようという動きが活発だ。そして、ライドシェアやカーシェアを公共交通機関として捉えている。きっと日本でもそうした考えが広まっていくだろう。自治体が税金で公共交通を賄うのは難しい。誰かに頼みたくなるはずだ。コネクテッドはこの動きを加速する。


北川 「ライドシェアやカーシェアを公共交通のように使う」というと、今は心配事が多く、受け入れにくいかもしれない。ただし、困っていて、何とかして公共交通の代替手段を作りたいと考える地域もあるはずだ。最初はそうした場所に制限された形で入っていくことになるだろう。導入地域が増えていけば、それが既成事実となり、この新しい利用形態が目に見える形で身の回りに広がっていく。そうした過程を経ることで、次第に社会全体がシェアリングサービスを公共交通として使うことに慣れていくのではないだろうか。


――コネクテッド関連で、今後、開発が期待される技術分野は何か。


白石 実際にハンドルを握っているドライバーが誰なのかをリアルタイムで認識・識別する個人認証技術が求められてくると見ている。今は、路上を走行しているそれぞれの自動車について、誰が運転しているのかを全くチェックできていない。サービス課金の面でも、セキュリティーの面でも、運転しているドライバーが誰なのかを認識できるようになれば、そのデータを基盤とするさまざまなサービスが開発されるだろう。

別の視点になるが、「移動空間」としての活用も期待したい。例えば通勤で使う人がすごく多いという事実から、毎日、決まった生活パターンでドライバーズシートに座っているところに着目するとしよう。ここで各種の身体データを取れば、同じ生活パターンにおける規則的なデータ収集が可能になる。コネクテッドカーを「通信機能を持つ移動空間」と捉え直せば、新しい価値や新しい活用法が見えてくるのではないだろうか。


――自動運転とコネクテッドについて、事業開発の観点で指摘したいことは何か。


白石 テクノロジーのコストが一定ではないことだ。ストレージやCPU(中央演算処理装置)パワーの調達コストはどんどん下がっている。将来、調達コストがどのように推移するのかを十分に見越した上で取り組むべきだ。減価償却をどうするかを考えて計画すれば、対象となる技術ごとに適切なやり方というものが見つかるだろう。通信もコンピューティングパワーもストレージも、コストは時間とともに下がる。新サービスの立ち上げ時には、どの段階になれば利益が出てくるのかをテクノロジーコストの変化を折り込んで分析すべきだろう。

この記事は日経BPクリーンテック研究所の研究員が執筆し、日本経済新聞電子版のテクノロジー分野「自動運転」に掲載したものの転載です(本稿の初出:2017年6月23日)。