自動運転開発ベンダーも目指すウーバー

異分野の企業との提携を進めているのは自動車メーカーだけでない。例えばオンデマンド配車大手の米Uber Technologies(ウーバー・テクノロジーズ)はトヨタ自動車とのオンデマンド配車関連での協業の検討を進めるほか、地図事業者のオランダTomTomと提携して地図情報をUberのユーザーに提供できる体制を整えている。

Uber Technologiesの活動で興味深いのは、自らが自動運転技術の開発に本腰を入れていることだ。研究開発の中核となるのは、2015年にカーネギーメロン大学と提携して米国のピッツバーグに設立したAdvanced Technologies Center(ATC)。ATCは安全で信頼できる輸送手段の提供に向けた長期的な技術開発を目的として活動しており、自動運転ソフトやハードウエア技術の開発に加えて、Uber Technologiesが開発した自動運転ソフトを市販車に実装するための技術開発にも取り組んでいる。

 2016年8月にはトラック向けの自動運転開発キットを開発する米Ottoを買収すると同時に、スウェーデンのVolvo Carsと提携して自動運転車の共同開発プロジェクトを立ち上げた(図2)。Volvo Carsとの共同プロジェクトでは、Volvo Carsのベース車両にUber Technologiesの自動運転技術を組み込む共同開発を予定する。自動車メーカーがベース車両を提供し、クラウドベンダーが自動運転技術を提供して自動運転車を開発する手法は、ベース車両を米FCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)が提供し、そこにWaymoが自動運転技術を組み込むFCA-Waymoの協業関係と似ている。

(図2)Uber Technologiesの協業・提携関係
(図2)Uber Technologiesの協業・提携関係

BMWとIntelなどがオープンプラットフォーム開発へ

自動運転車を共同開発する動きは、Volvo Cars-Uber Technologies、FCA-Waymoのほかにもある。例えば独BMW、イスラエルMobileye、米Intelは2016年7月、自動車のドアロックからデータセンターまでを含む自動運転車向けのオープンなプラットフォームを2021年までに共同開発すると発表した。

この共同プロジェクトのメンバーであるMobileyeは翌8月、英Delphi Automotiveとの間で自動運転プラットフォームの共同開発で提携した。こちらは2019年までの完成を目指す。このように、一つの企業が異なる企業との間で自動運転開発プロジェクトを並行して実施するケースも少なくない。

Uber Technologiesとの共同プロジェクトを進めるVolvo Carsは、2016年9月にスウェーデンAutolivと自動運転ソフトの開発に向けて共同所有会社を設立し、自動運転ソフト市場に参入することを発表。この合弁企業で開発した自動運転技術を、Autolivを通して世界の自動車メーカーに販売する計画である。

異分野の企業間で構築する巨大なエコシステム

図1と図2では、Ford MotorとUber Technologiesが提携・協業した企業名と、その企業がどのような事業分野に所属しているのかを示した。この図を見ると、自動運転車が牽引する新しいモビリティビジネスを支える事業分野が見えてくる。

自動運転車の実現に当たっては、自動車メーカーと自動車部品サプライヤーが研究開発してきた車両設計・車両制御技術だけでなく、ドライバーの「眼」の役割を果たすセンサーや、センサーから受け取った情報から周辺の状況を認識・判断して安全な運転操作を実行する頭脳の役割を果たすAIソフトが必要になる。

より高度な完全自動運転の実現に当たっては、走行地域の高精細な3次元デジタル地図をクラウドから入手して活用しなければならない。事業面では、オンデマンド配車事業者に代表される各種のモビリティサービス事業者との連携が欠かせない。

このように、自動運転車を活用するビジネスは、さまざまな分野で強みを持つ企業が独自技術を持ち寄り、それぞれの技術を効率的かつ効果的に組み合わせた巨大なエコシステムを構築することで完成する(図3)。この新しく生まれつつある巨大産業で注目すべきことは、全体を構成する各種分野の技術がそれぞれ独立して発展を遂げてきたにもかかわらず、互いに密接な関係を保ちながら自動運転車を支える構造を作りつつある点だ。

(図3)自動運転車を支えるエコシステム
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(図3)自動運転車を支えるエコシステム

協調領域と競争領域は一様ではない。付き合いがなかった異分野企業との協業はもちろん、大口ユーザーだった企業との競合さえ起こりうる。他社よりも優れた技術を生み出すことと同様に、他社の技術やサービスといかに調和できるかがこの産業で生き残るための競争力になりそうだ。

この記事は日経BPクリーンテック研究所の研究員が執筆し、日本経済新聞電子版のテクノロジー分野「自動運転」(2017年1月13日)に掲載したものの転載です。