――車載センサーの性能が上がり、センサー情報から周辺地図を作成する技術も進化すれば、走行車両が装備しているセンサーの取得情報だけでも走行地域周辺の詳細な3次元デジタル地図を生成できるようになるのではないか。


カレシー 走行車両が走行エリアのデジタル地図を入手する方法としては、車両が搭載するセンサー、車載コンピュータ、地図生成ソフトなどの車載機器だけで作る方法がある。クラウドで作って配布する方法も、車載機器だけで作る方法も、急速に進化している。この二つをどのように組み合わせて使うのが効率的なのかは議論が分かれるところであり、これまでも議論が繰り返されてきた。クラウドでやるべきという考えが主流の時もあれば、車両だけで十分という考えが支配的な時もあった。

 さまざまなセンサーを多数搭載し、それらのセンサー情報を複合的に処理する「センサーフュージョン」を駆使して正確な地図を作成するにはコストがかかる。高性能なLiDARはまだまだ高額だし、センサーフュージョンはコンピューティングパワーが必要になるため車載コンピュータは高性能でなければならない。車載機器でどこまでやるのか、クラウドに何を求めるのかは、それぞれのコストが今後どう推移していくのかを見極めて判断することになる。

 重要なことは、車両が搭載するセンサー情報だけに頼る場合は、センサーが検知できない離れたエリアの状況が分からないことだ。自動運転の場合は、車両が搭載するセンサーが検知できないほど離れた隣接エリアの状況が分かっていた方が安全に運転操作できる場面が多い。少し先で事故が起こっていたら、事前に速度を落とすことができる。それだけでも安全を確保する確率は確実に高まる。

 今進めているクラウド地図では、センサーを装備する多数の走行車両からの情報をオンラインで収集し、集まってきた大量のセンサー情報をビッグデータ解析して得られた交通規制や渋滞状況を各車両に送ることを予定している。走行車両が検知できない遠くの状況をほぼリアルタイムで周知できるところが特徴となる。

 もう一つ指摘しておきたいのは、低価格の自動車は高額なセンサーを搭載できないこと。低価格の自動車でADASを実現するなら、安いセンサーと簡易なクラウド地図の組み合わせが現実解ではないだろうか。

――HEREが自動運転向けのクラウド地図として構築中の「HD Live Map」はリアルタイムの情報も反映した地図なのか。


カレシー そうだ。HD Live Mapでは走行中の車両がセンサーで収集した情報をクラウドに集めて地図を更新する。クラウドから配信した地図情報と、車両のセンサーが測定した情報を照らし合わせて、地図が誤っていると判断したら、その情報をクラウドに送ってクラウド地図を更新する。更新対象は地図そのものだけではない。速度規制とか車間距離とか車線規制とか、そのときどきで変更される道路情報はいろいろある。

例えばあるエリアの速度制限が時速60kmから時速40kmに変わったとする。この場合、そのエリアを走行している車両のカメラは速度制限の標識を撮影し、それが「制限速度が時速40km」と検知する。すると車載機器はクラウド地図で送られてきた制限速度(時速60km)が間違っていると判断し、クラウドに最新の制限速度(時速40km)を通知する。この通知を受け取ることで、クラウド地図はほぼリアルタイムに制限速度をアップデートすることができる。

クラウドで収集するセンサー情報としては、車両の速度、方向、位置、前方カメラで検出する交通標識情報、ハザードランプの使用状況、ワイパーの動き、フォグランプの使用状況、ABSの作動状況などがある。まずは出資企業であるAudi、BMW、Daimlerの車両から、走行時のセンサー情報を収集する計画だ。

――リアルタイムでセンサー情報を収集することで提供できる特徴的なサービスとしては何があるか。


カレシー 駐車スペースを見つけるサービスを検討している。多くの車両がセンサー情報をクラウドに送る時代になれば、駐車場や駐車スペースのどの場所に空きがあるかといった情報を、リアルタイムで管理できるようになる。こうした情報を上手く活用すれば、自らの目的地近くの駐車スペースを探すことができるし、空きスペースを予約できるサービスを提供することにつながるだろう。

この記事は日経BPクリーンテック研究所の研究員が執筆し、日本経済新聞電子版のテクノロジー分野「自動運転」に掲載したものの転載です(本稿の初出:2017年4月4日)。