自動運転車は信号無視や速度超過をしない

国内の交通事故を総合的に分析している交通事故総合分析センター(ITARDA)研究部特別研究員兼研究第一課長の西田泰氏は、「法令違反をヒューマンエラーの観点で分析する場合は、故意性が低い(過失性の高い)、狭義の意味でのヒューマンエラーと考えられるもの(法令違反の安全運転義務違反が相当)だけでなく、信号無視や速度超過といった故意性の高いものをヒューマンエラーに含めるかを考慮すべきだ」と指摘する。

その上で、「現在想定されている自動運転は、信号無視や速度超過といった危険走行はしないので、過失(ヒューマンエラー)による事故だけでなく、故意性の強い危険な運転操作による事故も防止できるだろう」と分析する。

現在、自動運転開発の現場では、ドライバーの体調をカメラやセンサーで監視することで、ドライバーが安全に運転操作できる状態にあるかどうかを見極める技術開発が進んでいる。

例えば、独Daimlerは「アクティブ・エマージェンシー・ストップ・アシスト」、トヨタ自動車は「ドライバー異常時停車支援システム」(図3)という名称で、ドライバーが運転中に急病などでステアリング操作できないことをセンサーが感知したときに、安全な場所で自動停車する機能の提供を始めた。両社に共通するのは、乗員の安全を第一に考えているところだ。

(図3)トヨタ自動車が2017年6月に発表した、LEXUSの新型LS向け予防安全技術の一つ「ドライバー異常時停車支援システム」の作動イメージ
(出所:トヨタ自動車)

このドライバー監視技術の適用領域は広く、効果は大きい。ドライバーの状態が明らかに安全な運転行為を遂行できない状態にあると判断し、運転操作を強制的に中止して路肩に止めることは、乗員の安全はもちろん、周辺の歩行者や自動車、道路周辺の建物などの安全を守るという意味でも効果がある。

例えば、悪質な違法行為である飲酒運転や居眠り運転の危険のあるドライバー(の状態)を検知したなら、そのような状態が確認されている間は運転できないようにする機能も求められるかもしれない。そして、強制的な安全制御を社会に根付かせるためには、法制度や保険制度の面からも安全制御の導入を促す仕組みが必要になるだろう。

自動運転技術は、うっかりミスによる交通事故を回避したり、被害を小さくしたりするだけでなく、悪質なドライバーの危険運転行為そのものを防止したり、抑制したりするのに効力を発揮する。自動運転技術の社会実装の課題はさまざまあるが、個々の技術で実績を積み、着実にユーザーの信頼を勝ち取ることが社会実装への近道となるはずだ。

この記事は日経BPクリーンテック研究所の研究員が執筆し、日本経済新聞電子版のテクノロジー分野「自動運転」に掲載したものの転載です(本稿の初出:2017年7月27日)。