日本で多い対歩行者事故


――2017年6月にITARDAが公開した交通死亡事故状況の海外比較を見ると、国によって事故の傾向が異なっていることが分かる。これは自動運転技術の開発においても安全性を高めるには地域特性をかなり盛り込む必要があるということなのか。

各国の交通手段別交通事故死者数の構成率(2015年) (出所:交通事故総合分析センター、「交通事故の国際比較(2015年)」、2017年6月)


金丸 確かに、国が違えば交通死亡事故の状況にも違いが出てくる。欧米ではドライバーが命を落とすケースが半数程度ある。特に米国や北欧は自損の単独事故が多い。これに対して日本は、対歩行者の事故が圧倒的に多い。特に「左折時の歩行者巻き込み」は日本特有の事故原因と言える。

もっとも、自動運転開発に当たっては、まずは世界に共通する安全運転技術の開発を第一にすべきだろう。そうした共通の基盤を確立した上で、地域別の特徴を加味した技術開発を加えていく。自動運転は世界で競う技術分野だから、世界に通用する技術開発が求められると考えている。


西田 日本は対歩行者の交通死亡事故が多いが、この傾向は韓国も同じである。日本で対歩行者向けの安全装置を開発すれば、それは韓国をはじめとする対歩行者の交通事故の多い海外市場での販売活動時に訴求ポイントとして活用できるだろう。


――事故現場を知る専門家の立場で、自動運転開発者に要望はないか。


西田 一番お願いしたいのは、自動運転車が何をしたのかの履歴を残すことだ。ドライブレコーダーのように、客観的な動作記録を残して、後から検証できる仕組みを入れてほしい。記録が必要なのは、装置が「いつ」「何を」「どう」動作させたのかだ。そして、これらの動作履歴を開発者にフィードバックする仕組みが必要。さらに米国のような標準化が望まれる。

自動ブレーキは普及しつつあるが、統計データを見ると、追突事故は減っていない。出会い頭は減っているし、追突事故にしても被害は軽くなっているかもしれない。ただ、何らかの別の事故原因が生まれている可能性はある。事故原因はさまざまだ。各種の安全装置が、開発者が想定したように動作しているのかを個別検証し、その実態を開発現場に戻すことができれば、効果的に安全装置を改良できるはずだ。


金丸 動作履歴を残すことは、被害者救済の観点からも必要である。事故が起こったときの対応が円滑になるからだ。捜査や調査の費用も軽減できるし、被害者への補償までの時間を短く出来ることにつながるだろう。

この記事は日経BPクリーンテック研究所の研究員が執筆し、日本経済新聞電子版のテクノロジー分野「自動運転」に掲載したものの転載です(本稿の初出:2017年8月10日)。