「デッドマン・システム」に二つの課題


――緊急時の安全についてトヨタ自動車や独Daimler(ダイムラー)は、ドライバーが運転操作していない状況が続いたときに作動する「緊急時の自動停止機構」を実用化した。これは「デッドマン・システム」(運転手が急死した場合などに対処するための緊急停止システム。鉄道などの公共交通機関などで実用化されている)と見なせるが、こうした安全機構は今すぐ広く実装するべきではないだろうか。


隈部 デッドマン・システムはドライバーが操作できないという状況の下で自動車が運転操作を実施することになるため、我々は自動運転のレベル3に相当すると見ている。確かにこうした緊急事態はドライバーに操作を委ねるよりも、機械が操作した方が安全だろう。

ただし、その実現に当たって考慮すべき課題が二つある。第一はドライバーがどういう状況にあるかを正確に把握すること。第二は、仮に自動停止するときに、本当にそこが安全に停止できる場所なのかを見極めることだ。ドライバーの状態把握と安全な停止場所の見極めには、もっと研究が必要だ。


――レベル3の実現に当たっては、運転操作が自動車からドライバーに切り替わるまでの時間が議論されている。例えば10秒という基準ができたとしても、すべてのドライバーがどんな状態からでも10秒間で運転操作に復帰できるのだろうか。仮に基準を満たした製品が商品化されたとしても、ユーザーによっては不安を感じるケースがあるのではないだろうか。


隈部 確かに疑問や不安を感じるかもしれない。ただ、自動運転の高度化技術の開発促進という観点で見ると、こうした基準制定には意義がある。開発現場は、ある開発目標が設定されればその実現に向けて知恵を出せる。何らかの具体的な目標がなければ進めない。

たとえ不完全な目標であったとしても、目標があればそれを実現するためにチャレンジし、その目標をクリアすれば、開発結果を世に問うことができる。次は、その結果に対する意見を聞いて、新たな目標を立てて、それをクリアする。この繰り返しによって完成度が上がる。

新しい世界を実現するためには何らかのルールを決め、そのルールを満たす階段を設けることが重要だ。そしてその階段を一段上る勇気を持つこと。これを繰り返すことで新しい世界が作られていくのではないだろうか。



この記事は日経BPクリーンテック研究所の研究員が執筆し、日本経済新聞電子版のテクノロジー分野「自動運転」に掲載したものの転載です(本稿の初出:2017年9月5日)。