自動運転の技術開発に欠かせないものに公道を用いた実走実験がある。現在、人工知能(AI)を用いた自動運転ソフトの開発では、仮想的な街をクラウドの中に構築し、その仮想空間の中を自動運転車が走り回ることで自動運転技術を高める手法が一般的となっており、その仮想空間をつくるための基礎データは実際の公道を走行することで取得している。日経BPクリーンテック研究所が2017年12月に発行した『世界自動運転・コネクテッドカー開発総覧』の調査データから、最新の自動運転実験などについて報告する。

世界中の自動車メーカーなどが加州に集結

公道での実走実験は様々な国で実施されている。自動運転開発が盛んで実用化に積極的な地域は、公道による走行実験を認めている。米国、英国、フランス、ドイツ、中国、シンガポールなどだ。その他の国でも自動車メーカーや自動運転開発企業の拠点があるエリアでは、自治体が後押しするなどして公道実験環境を整えている。

世界中の自動運転開発企業が公道実験を展開するエリアとしては、米国カリフォルニア州が有名である。カリフォルニア州での公道テストを管理する同州の車両管理局(DMV:Department of Motor Vehicles)の登録リストには、世界中の自動車メーカーと自動運転開発のスタートアップ企業が名を連ねている。また、アリゾナ州も自動運転の実走実験に協力的であるという理由などから、大規模実験が行われている。

2017年になって、公道での実証実験の目的に新しい動きが3つ出てきた。

第1は、小売企業や物流企業と共同で、商品や配達物の配送を自動配送バンで実施する試みである。米フォード・モーターはピザ販売の米ドミノ・ピザ、独ダイムラーはスイスのオンライン販売事業者siroop、米エヌビディアと独ZFフリードリヒスハーフェンは運送業の独ドイツポストDHLといった組み合わせで、自動車関連企業と一般企業の共同実験が始まっている。

取り扱う配送物も様々である。例えば、世界最大規模のオンラインスーパーマーケットの英オカドは、自走式配送バンを用いて食料品を配達する実証実験を実施した。実験に用いられた自走式の配送バン「CargoPod」は英オックスボティカが開発した自律ソフトウエアシステム「Selenium」を搭載し、一度に合計128キログラムの食料品を運ぶことができる。

CargoPodで食品を配送している様子
ベース車両はデンマークにあるガリアの小型電気自動車「Utility City」。Seleniumを搭載して自動運転機能を持たせた(出所:オックスボティカ)

配送現場での先駆的な取り組みとしては、ドローンを装備する自動配送バン「メルセデス・ベンツ Vito」を用いるダイムラーの実験がある。配送実験に用いられるドローンは、最長20キロメートルまで、最大2キログラムのパッケージを運ぶことができるという。ダイムラーは自走式の小型配送ロボットを搭載する自動配送バンも開発中である。

ドローンを搭載する自動配送バンで配達する様子
(出所:ダイムラー)

一般市民に自動運転車を貸し出し

第2は、一般市民に自動運転車を体験してもらう中で自動運転車の課題を探る試みである。代表的なものにスウェーデンのボルボ・カーの「Drive Meプロジェクト」がある。これは、ボルボ・カーが自治体などと協力関係を結んで実施している一般道路での大規模実証実験だ。自動運転機能を搭載した100台の「XC90」を実験エリアであるスウェーデン・ヨーテボリの一般ユーザーに提供し、実施している。

米ウェイモが米国アリゾナ州で始めた「Early Rider Program」も同様の試みである。自動運転車を米国の一般市民の移動用途に貸し出す活動で、それぞれの利用状況における使用感や要望を利用者から集めている。17年11月には、テストドライバーを同乗させない形での運用も始めた。運転席も助手席も空席のまま、後部座席に乗客を乗せて目的地まで走行する。

第3は、自動運転車と街中の日常の調和を調査することを目的とするものである。例えば、ウェイモはアリゾナ州チャンドラー市消防警察部と協力し、消防車、パトカー、白バイなどの緊急車両が走行したときの自動運転車の反応テストを実施した。

白バイ走行時の反応テストの様子
(出所:ウェイモ)