社会が自動運転車をどう受け止めるかという観点の調査も実施されている。これは「歩道を歩いている人や自転車の運転者、一般のドライバーが自動運転車を見たらどのように振る舞うか」という調査で、フォード・モーターと米バージニア・テック・トランスポーテーション・インスティテュートが共同で実施した。調査の目的は、人間が容易に理解できる標準的で視覚的な「自動運転車のための言語」の開発である。

調査に用いられる実験車両「Transit Connect」は自動運転車のように見える装備を施しており、「言語」を表現するための外部照明を備える。ドライバーは、シートのように見える「seat suit」と呼ぶテスト用の衣服を着て運転し、運転状態や停止状態を示す照明信号を表示して歩行者の反応を調べる。

調査に用いられた実験車両「Transit Connect」
(出所:フォード・モーター)
「seat suit」を着るドライバー
(出所:フォード・モーター)

道交法や道路運送車両法などは改正必須

研究開発のスピードはどんどん高まっている自動運転であるが、レベル3以上の自動運転技術を製品化して社会実装するには法制度を見直さなければならない。改正が必要となるのは、ドライバーの行動に関する法律と車両の設備や機能に関する法律である。

日本の場合で言えば、前者が警察庁所管の道路交通法(道交法)、後者が国土交通省所管の道路運送車両法である。さらに日本の場合は、自動車保険制度の根幹である自動車損害賠償保障法(自賠法)も対象となる。これらの法律はどれも、無人の自動運転車を想定していない。

例えば、レベル3の自動運転機能を備えるクルマが登場し、その機能を用いて公道を走行すれば、現行の道交法下ではドライバーの安全運転義務違反となる。このため、レベル3機能を商品の価値として提供するには法律改正を待たなければならない。

道路運送車両法は、公道を走るクルマが備えるべき機器や機能を規定したものである。例えばハンドルやブレーキペダルを持たないクルマは国内の公道を走行できないが、これはこの法律に違反するためである。

ただし国土交通省は2017年2月、国内での自動運転車の公道実証実験を可能にするために、道路運送車両の保安基準を緩和した。これにより、ハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダルを備えない車両であっても、速度制限、走行ルートの限定、緊急停止ボタンの設置などの安全確保措置が講じられていれば、公道走行できるようになった。

車両関係の規定については、国連欧州経済委員会にあるWP29(自動車基準調和世界フォーラム)で議論されており、ここでの決定事項を参考に各国が自国の規定を制定する。WP29は自動運転に対応した標準の改正作業を続けている。例えば自動操舵(そうだ)に関する国際標準「UN-R79」は動作条件を時速10キロメートル以下と規定しているが、これでは高速道路などでの自動操舵が実現できないため、WP29では速度上限を緩和する方向で議論を進めている。

自賠法もドライバーの存在を前提とした法律である。自動運転車が走行して起こした交通事故の損害補償を今の自賠法と同様の手法で担保するには、自賠法を改正して自動運転車対応にするか、自動運転車向けの新たな法制度をつくる必要があるだろう。

この記事は日経BPクリーンテック研究所の研究員が執筆し、日本経済新聞電子版のテクノロジー分野「自動運転」に掲載したものの転載です(本稿の初出:2018年2月16日)。