モービルアイ、自動運転車の安全性評価モデル

自動運転車の安全性を高める新たな試みも生まれている。例えば米インテルが買収したイスラエルのモービルアイは、自動運転車の安全性を評価する「RSS(レスポンシビリティ・センシティブ・セーフティ)モデル」を考案。RSSモデルを自動運転ソフトウエアに実装して自動運転車の安全性を高めることを提案している。

モービルアイは、RSSモデルの作成に当たって、他の車両がいかなる動きをしても自動運転車が事故の要因になり得ない「安全な状態」を理論的に定義し、安全性を高めるための要素をパラメーターとして扱えるようにした。例えば、車間距離をどの程度取れば安全なのかという項目に関しては、そのときどきの周辺状況や自動運転車の走行状況に応じたパラメーターを用いて安全な車間距離を計算式で算出する。

RSSモデルは、一連の数式で構成される安全運転のためのルールといえるもので、さまざまな自動運転ソフトと組み合わせて利用することを想定している。RSSモデルを組み込んだ自動運転車は、運転行為の安全性をRSSモデルに照らして判断する。RSSモデルに照らして危険と判断した場合は、安全と判断できる状態に車両を制御して安全性を確保する。

自動運転と安全性確保の開発体制を独立させている企業は他にもある。例えばトヨタは、「ショーファー(自動運転)」と「ガーディアン(高度安全運転支援)」と名付けた目的の異なる2種類の運転モードを設定して研究開発を進めている。ショーファーは自動運転の能力に視点を置いた開発で、ガーディアンは人を守ることに視点を置いている。ガーディアンが目指すところとRSSモデルが実現しようとしていることは同じである。

トヨタと米ライドシェア大手ウーバーテクノロジーズは18年8月、ライドシェア専用車両を共同開発して21年にウーバーのサービスに導入することを発表した。その専用車両にはウーバーの自動運転ソフトとトヨタのガーディアンが搭載される予定だ。

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トヨタとウーバーが共同開発するライドシェア専用車両のシステム構成図(出所:トヨタ自動車)

カメラだけの自動運転車で公道テスト

インテルとモービルアイはRSSモデルを公開して、その導入を自動運転開発企業に促す考えだ。普及活動の第1弾として、18年5月にイスラエルのエルサレムで公道テストを開始した。RSSモデルを実装した100台の自動運転車を公道走行させて、その安全性を実証する。

エルサレムでの公道実験に用いられたテスト車両(出所:インテル)

この実験に用いる初期段階の車両は、RSSモデルを実装した他にも、他メーカーの自動運転車とは異なる部分がある。それはクルマの周辺状況を検知するセンサーがカメラだけであることだ。通常の自動運転車はカメラ、レーダー、レーザーを使った測距センサー「LiDAR(ライダー)」を組み合わせて周辺認識を実行するが、モービルアイの実験車両は12台のカメラだけで周辺を認識する。8台のカメラは走行時の周辺認識に、4台のカメラは駐車時の障害物確認に使われる。

テスト車両に据え付けられたカメラ(出所:インテル)

モービルアイの自動運転車はカメラから得られた画像情報を基に、歩行者/車両の認識、運転可能な経路の検出、交通標識の意味を判断する。また、走行エリアの道路情報や交通情報をモービルアイのクラウド地図構築技術「REM(ロード・エクスペリエンス・マネジメント)」を用いてクラウドに送信し、高精度なクラウド地図をリアルタイム作成した上で、センチメートル単位の精度で自車位置を特定し、経路設定や車両制御に役立てる。

エルサレムで実施している公道テストで実験車両が捉えた周辺映像の様子(出所:インテル)

 モービルアイはカメラで撮影した映像データを画像処理して周辺認識する技術を強みとしており、このカメラだけの実験車両の公道テストによって、RSSの有効性に加えて、カメラだけでも安全に自動運転できることを示したい考えだ。ただし、カメラのみでテストした後は、レーダーやLiDARといった他のセンサーを追加してテストを続ける予定である。

百度「アポロ計画」に採用

RSSモデルが他社の自動運転車に搭載される可能性は十分にある。例えば中国インターネット検索大手の百度(バイドゥ)は18年7月、同社が進める自動運転プラットフォームの開発プロジェクトである「アポロ計画」に、モービルアイが開発したRSSモデルと12台のカメラを用いた周辺認識ソリューション「サラウンド・コンピューター・ビジョン・キット」を採用すると発表した。

アポロ計画は、自動運転ソフトをオープンソース・ソフトウエアとしてプロジェクト参加企業に提供するなどして開発環境の整備を進めており、中国における自動運転開発の中心的な存在となっている。アポロ計画に参加する企業は、モービルアイのRSSモデルと画像処理技術を比較的容易に自社の自動運転ソフトに導入できることになりそうだ。