無人の自動運転車と「アイコンタクト」

交通安全を考えるとき、自動運転車と一般のクルマの大きな違いとして指摘されることに、「ドライバーとアイコンタクトができない」という問題がある。一般のクルマの場合、歩行者はドライバーとアイコンタクトすることで、自分の存在を認識させて安全を確保できる。

しかし、ドライバーレスの自動運転車とはアイコンタクトができない。自動運転車が自分の存在に気がついているのかわからないというのは、安全性確保の観点に加えて、周りにいる歩行者やドライバーが安心感を得られないという問題にもつながる。

Drive.aiがフリスコ市のオンデマンド配車サービス向けに試作した自動運転車。ベース車両は日産自動車のミニバン「NV200」(出所:Drive.ai)

この問題を解決するための試みが実証実験の場で始まった。自動運転車自身が、自分が今、どのような状態にあるのかをディスプレーにテキスト表示して周囲に伝えるという試みである。開発したのは自動運転開発スタートアップの米Drive.ai(ドライブAI)。同社は自らの状態表示機能を備える自動運転車を試作し、18年7月から米国テキサス州フリスコの公道でオンデマンド配車サービスを試験提供している。

Drive.aiの自動運転車は、ボンネットの上と後部ドア、両サイドドアの前方部分の合計4カ所にディスプレーを備える。例えば横断歩道で歩行者の横断を待っているときは、その状況をクルマが自律的に検知し、自動運転車が「歩行者を待っている状態」であることをディスプレーにメッセージ表示して周辺にいる歩行者やドライバーに伝える。

Drive.aiの自動運転車のディスプレーには周辺の歩行者やドライバーに対するメッセージが表示される(出所:Drive.ai)

次の動作、乗員に伝える

自動運転車が今、どのような状態にあって、次にどんな行動を取るのかを知りたいのはクルマ周辺の歩行者やドライバーだけではない。一番それを知りたいのは、自動運転車に乗っている乗員かもしれない。乗員に安心感を与えるために、自動運転車が自らの次の動作を乗員に伝えるための技術開発も始まっている。

例えばオランダのクラウド地図大手のトムトムは、進行方向をカメラで撮影している映像にカーナビゲーション風のアイコンなどをオーバーレイ表示することで、自動運転車が次にどんなアクションを取る予定なのかを示す自動運転車向けヒューマンインタフェース「トムトムモーションQ」の開発を進めている。

トムトムモーションQの画面例。カメラで撮影する前方方向の映像に進行経路やその進み方をオーバーレイ表示して自動運転車の次の動きを直感的に乗員に伝える。加速するときは進行経路を示す線の色が濃くなり、減速するときは色が薄くなる(出所:トムトム)