量子コンピューターで自動運転開発を加速

自動運転関連の研究開発を加速するための新たな取り組みとしては、大規模な並列処理能力を備え、膨大な選択肢から最適な答えを導き出す「組み合わせ最適化問題」などでの高速計算が期待されている量子コンピューターの活用が徐々に具体化している。

先鞭(せんべん)をつけたのは独フォルクスワーゲン(VW)だ。17年3月に量子コンピューティング分野の専門企業であるDウエーブ・システムズと量子コンピューターのモビリティー分野への適用に関して共同プロジェクトを開始したことを発表した。

最初のプロジェクトは、Dウエーブ・システムズの量子コンピューター上でのトラフィックフローの最適化アルゴリズムのテストである。VWの専門家が最適化問題のアルゴリズムを作成し、中国・北京での1万台のタクシー走行時間をデータに用いた。このテストで、交通の流れを最適化できることを示し、複雑な問題の解決に強い量子コンピューティングを大都市の交通問題解決に適用できることを明らかにした。他の適用候補としては、自律走行、ロボティクス、スマート工場、機械学習、車両の安全性を監視するインテリジェント・モビリティー・ソリューションなどがある。

国内企業では、デンソーが豊田通商と共同で17年12月から交通系商用アプリを用いた量子コンピューターの実証実験を実施している。具体的には、タイのタクシーやトラック約13万台に取り付けた専用車載器から収集した位置情報を活用し、クラウド接続したDウエーブ・システムズの量子コンピューターで処理する。実証実験を通じて、渋滞解消や緊急車両の優先的な経路生成などの新しいアプリケーション提案につなげる考えだ。

18年3月には、独ダイムラーが量子コンピューティングの分野における戦略的研究パートナーシップを米グーグルと締結した。ダイムラーはモビリティーに関連する問題解決の際に、グーグルが所有する量子コンピューターを利用できるようになる。具体的な研究テーマとしては、バッテリーセルや深層学習の開発、生産計画と生産プロセスの最適化、輸送ロジスティクスの効率化などがあるという。







この記事は日経BP総研 クリーンテック ラボの研究員が執筆し、日本経済新聞電子版のテクノロジー分野「自動運転」に「自動運転が作る未来」として掲載したものの転載です(本稿の初出:2018年9月17日)。