「1万台の自動運転バス走らせる」


――ソフトバンググループの中でのSBドライブの役割は何か。


佐治 「ソフトバンクグループ全体の活動はモビリティーという世界にとどまらない。(あらゆるモノがネットにつながる)IoT、ロボティクス、人工知能(AI)という幅広いレイヤーで活動しており、それらの重なる部分に自動運転やライドシェアがあるだけだ。ソフトバンクグループとしては100年後、200年後のテクノロジーを押さえていくが、SBドライブはその中でできるところからモビリティーを手掛けていく考えだ」

「課題先進国の日本で25年までに1万台の自動運転バスを走らせて、『これが自動運転モビリティーソサエティーだ』と宣言できれば、ソフトバンクグループが投資しているライドシェア・カンパニーが、日本のノウハウを現地で生かすこともできるだろう。実際、仏ナビヤや中国の百度は、日本を課題先進国の実験場としてみている」

「この状況でSBドライブは、『田舎には移動手段がない』といった今の日本が抱える社会課題に対して、関係省庁、地方自治体、地元のバス会社などと一緒に、地に足の付いたソリューションを提供して課題解決していきたい」


――SBドライブはいくつもの自治体と提携関係を結んでいる。提携の目的は実証実験の実施にあるのか。


宮田 「実験で走行することだけが目的ではない。現在、4つの地域と協定を結んでおり、一番の目的は『自動運転バスは、それぞれの場所でどのように使われるべきなのか』を議論することだ。自動運転バスというのは、これまでになかった新しい交通手段なので、どういうニーズがあるのか、どういうところだったらふさわしいのかということがまだはっきり分かっていないからだ」

6モデルに分けて実証実験

SBドライブの宮田証COO

「実証実験は、6つのモデルに分類して進めている。都市型モデルでは北九州市、観光地モデルでは白馬村、中山間地域モデルでは八頭町といった具合だ。地方の既存の交通事業者との連携や自動運転の車両づくりという観点もある。こちらについては浜松市で、遠州鉄道やスズキと一緒に検証した」

「復興地というモデルもある。例えば震災や水害で、既存の交通網が破壊されたところだ。交通インフラをゼロから作り直さなくてはいけないケースがあるため、自動運転バスの活用も他のエリアとは違った方法があるはずだ。もう一つは島のモデル。島の交通網は特異である。島には、外周を回る一本道があって、右折左折をせずに通行できるケースが非常に多い。また、急に車が増えるといった心配もない。こうした変化の少ない道路環境は運用しやすい」

「復興地と島のモデルに関しては、特別な地域との協定を結んでいないが、復興では東京電力の原子力発電所内での自動運転バスの運行支援を始めているし、島では沖縄県で内閣府の実証実験を実施した」


――羽田空港と共同で閉鎖空間での実証実験を実施している。これは別のモデルになるのか。


宮田 「閉鎖空間での実証実験では、ランドリフトとか電気自動車(EV)シャトルとか、海外ではロースピードビークルと呼ばれているものを用いる。ナビヤ・アルマがそれだ。このタイプは、低速で、限られた地域内を横に移動するエレベーターように移動するのが特徴だ。ナビヤとのコネクションがあったので、ロースピードビークルに関しても、新しい自動運転の可能性のひとつとしてやるべきではないかということで始めた」

仏ナビヤの自動運転シャトル「ナビヤ・アルマ」(出所:SBドライブ)


――なぜタクシーではなく、バスなのか。

佐治 「タクシーもバスも大変だけど、できるところからやっていくという戦略で選んだらバスになった。その過程では、トラックの方が人を運ばないから安全ではないかという議論もあった。でも、人が中にいるからこそ安全が重要であり、意義があるという結論に達して、バスをやっている」


宮田 「我々が話す『バス型の自動運転』とは定時定路線の運行のことだ。定時定路線であれば、大きさが乗用車タイプであってもバスという認識である。一方の『タクシー型の自動運転』は、利用者が指示すれば、どこにでも自動走行してたどり着ける自動運転車を意味する。自動運転レベルで言えばレベル5だ。ただ、その実用化は技術的に相当先だとみている」