運転以外も 運転手の仕事を代替


――SBドライブならではのソリューションとして自動運転バス総合プラットフォーム「ディスパッチャー」がある。これは自動運転バスの運行管理をするためのシステムなのか。


宮田 「違う。我々が開発しているディスパッチャーは、バスの運行管理だけをしているわけではない。バスの運転手がやっていることすべてを対象としている。料金の収受、お客さんの質問への対応、お客さんへの声がけなど、運転手は運転以外にもたくさんの仕事がある。だから、自動運転バスの事業化に当たっては、それらの仕事を遠隔から監視・管理するための周辺技術をまとめたプラットフォームが必要と考えた。それがディスパッチャーだ」

ディスパッチャーを用いた自動運転バスのシステム構成(出所:SBドライブ)
ディスパッチャーの管理画面(MAP)の例(出所:SBドライブ)
ディスパッチャーの管理画面(遠隔監視)の例(出所:SBドライブ)

「例えば、福岡空港でテストしたSpiralMind(東京・品川)の『アバターテレポーテーション』という技術がある。人の目や鼻、口をカメラで検出し、それらの動きを遠隔地のディスプレー上に表示されたキャラクターの表情にリアルタイムで反映する技術で、これを使えば何かトラブルが生じたときには、車両内の画面にキャラクターが出てきて乗客と対応するシステムを作れる。これもディスパッチャーと連携した機能の一部だ。こうしたプラットフォームがあれば、これまで運転手が担ってきたことをすべて実行できる自動運転バスを作れると考えている」


――自動運転社会において、SBドライブはどんな役割を果たしたいと考えているのか。


佐治 「自動運転車と交通事業者を結ぶプラットフォームでありたいと考えている。我々の強みは、いろんなところにディスパッチャーをつなげられるところにある。自動運転車を開発しているメーカーから依頼があれば、どの車両にもつなげるようにしていきたい。そうすれば、交通事業者はディスパッチャーを用いることで、さまざまな自動運転バスを使えるようになる」


――18年4月、三井物産がSBドライブと連携して、廃炉作業が進む福島第1原子力発電所の構内用バスとして、ナビヤ・アルマの運行サービスを始めると発表した。自動運転バスを用いた移動サービスは実用化段階を迎えたといえるのか。


宮田 「実証フェーズは17年で終わったとみている。18年からは導入フェーズに入る。福島第1原子力発電所でナビヤ・アルマが実務で使われるようになっただけでなく、地方の市町村が導入を前向きに検討するようになってきたし、地方の交通事業者からも『自動運転バスを購入して、実営業を始めたい』という声がいくつも届いている。18年は導入元年となりそうだ」

問題抱える自治体へ「具体的な導入場所を」


――多くの地方自治体が移動弱者の問題を抱えている。自動運転バスで課題解決したいと思っている自治体は何をすべきか。


宮田 「自治体への要望が2つある。第1は、『ここだったら実際のサービスとして導入できるのでは?』という具体的な場所を教えてほしいこと。原発のような閉鎖空間でもかまわない。サービス導入できそうな場所は、その場所をよく知る人にしか分からない」

「第2は、運用に当たっては収支を記録してほしいこと。定期運行に近い形で運用し、そこに住んでいる人々にちゃんと使っていただいたうえで、年間で何千万円使って、何人にどれだけの利便性を提供したのかを評価する数字があれば、今後の展開を考えやすくなる」


――自治体の取り組みで特徴的な事例があれば教えてほしい。


宮田 「費用の確保で面白い取り組みがある。北海道の上士幌町は17年10月に無人運転バスの公道での実証実験を実施し、18年以降も継続する計画がある。その運用経費にふるさと納税で集まったお金を使おうと考えている。我々としてもPRになるなら、いろいろな手伝いをできるケースがあるかもしれない。まずは具体的な導入場所の候補を教えてほしい」







この記事は日経BP総研 クリーンテック ラボの研究員が執筆し、日本経済新聞電子版のテクノロジー分野「自動運転」に「自動運転が作る未来」として掲載したものの転載です(本稿の初出:2018年10月26日)。