自動運転車による自律走行を実現するための技術要素は多岐にわたる。周辺状況に応じて適切に車両制御するための自動運転ソフト、周辺状況を的確に把握するためのセンサー、安全運転に必要な情報をやり取りするための大容量・低遅延な通信システム――。これら自動運転の技術要素のほとんどは、世界のどの地域での自動運転時にも必要となるものの、地域を超えて利用可能な共通技術でもあるため、世界中から最も優れた技術を調達することができる。しかし一つだけ、地域別に用意しなければならない技術要素がある。それは、走行エリアの詳細な3次元デジタル地図だ。

高精細地図で存在感

自動運転車は、自らが道路上のどこにいるのかを、全地球測位システム(GPS)情報やセンサーから得た計測情報をデジタル地図に照らして判断している。安全を確保するためにレーン中央を確実に走行するには、誤差が数センチメートルという高い精度のデジタル地図が必要だ。こうしたことから、自動運転車を自動走行させるテストの実施に当たっては、実施者は走行道路の高精細3次元デジタル地図をあらかじめ用意している。

土木測量ソフトの開発大手で、高精細な3次元デジタル地図の作成について豊富な実績を持つアイサンテクノロジーは、日本における自動運転車公道テストの実施に欠かせない技術企業として存在感を高めている。

同社は愛知県が2016年から毎年実施している自動運転関連の実証推進事業に3年連続で受託企業の一つとして選定されているほか、18年10月には国土交通省航空局が公募した「空港制限区域内の自動走行に係る実証実験」の実施者にダイナミックマップ基盤と共に選定された。17年12月には、業務提携を結んでいるティアフォー(名古屋市)、岡谷綱機(同)と共同で、一般道における「ワンマイルモビリティー(最寄り駅から目的地までのラストワンマイルの移動)」向けの自動運転車両の試作機「Milee(マイリー)」も発表している。

アイサンテクノロジーの取締役でMMS(モービル・マッピング・システム)事業本部長の佐藤直人氏に、日本における自動運転車の実用化の現状と課題を聞いた。

アイサンテクノロジーの佐藤直人取締役(写真:北山宏一)

「完全自動運転」に社会的価値

―自動運転関連の事業に取り組むきっかけは?

「自動運転関連のビジネスに取り組み始めたのは約10年前。当時は世の中に自動運転という言葉が知られていなかったが、自動運転に取り組んでいる方から声をかけてもらった。そのとき、『あぁ、そうか。我々がやっている地図というのは将来、こういう使われ方をしていくんだな』と思った。それ以降、自動運転をターゲットにした研究開発に取り組んでいる」

「研究開発を進める中で、多くのパートナーとの出会いがあった。自動運転の研究で先進的だった名古屋大学との出会いがあり、そこからティアフォーというスタートアップが生まれ、資本業務提携を結んで強力なパートナーシップを築くことができた」

―自動運転の現状をどうみているか。

「自動運転は大きく2つある。一つは自動車メーカーが考える量産車向けの自動運転。高速道路プラスアルファが基本となる。実際、経済産業省や自動車メーカーは20年くらいに高速道路で(人が運転に原則関わらない)『レベル3』を実現する計画を発表している。ただ、自動車メーカーの量産車が一般道をレベル3あるいは(エリアを限定した完全自動運転である)『レベル4』で走るのはいつになるかというと、どこも明確な答えを出せていない状況にある」

「ところが海外を見ると、米ウェイモをはじめとして、レベル3を超えてレベル4を一般道で走らせる世界が見えてきている。それがもう一つの自動運転だ。レベル4を一般道で走らせる移動サービス、あるいは物流サービスがもうすぐ始まるだろう。我々は、これこそが社会的に価値のある自動運転ビジネスだとみている」

「山間部や過疎地を含む一般道で自動運転サービスを実現すれば、地域経済とか、地域活性化とか、過疎地対策とか、様々な社会課題を解決できる。最近では、貨客混載(荷物と人を混在して運ぶこと)という法律の壁をブレイクスルーしようという話題もある。この動きと自動運転が一緒になれば、社会的なインパクトは大きい。そこで早い段階から一緒にやってきたパートナーと一緒に、我々の高精細3次元デジタル地図を組み込んだ移動サービスや物流サービスのプラットフォーム開発に取り組んでいる」