―自治体での実証実験では「公道走行デモがゴール」というものが少なくない。ただ、それでは実際の社会課題は解決できない。自治体は次のステップに向けてどうすればいいのか。

「もう『デモありき』の考えは捨てるべきだ。技術実証や走れるか走れないかの議論からステップアップすべきだろう。自動運転は、レベル4にしろ、無人にしろ、できる前提で考える時期にきているのではないか。自動運転の実現を前提に、どのようなサービスを提供したいのか、できるのかを考えていきたい」

「『私はこの路線とこの路線をつなぎたい』『なぜそこなんですか』『行政課題があって困っている』『そこに無人の車が24時間365日走れるとしたら、十分なメリットがあると言い切れますか』――。そんなやり取りがあって『十分なメリットがある』と断言できるなら、サービスとビジネスモデルを考えるべきだ。車両は何にするか、というのは次の話になる」

「車両についても、『何時に何人乗るか』『ヒトを運ぶのか、モノを運ぶのか』『道路幅はどれだけあるか』『信号はあるか』などの整理が先だ。それらの条件をそろえてから、20人乗りバスをつくる方がいいか、5人乗りを4台つくった方がいいか議論すればいい。5人乗り車両を4台数珠つなぎに走らせる方が、バスよりも柔軟に配車できたり、細い道を走れたりできるなど、利便性を高められることもある」

「バスにするか、小型バスにするか、乗用車でいくかはあとから決めればいい。やりたいサービスが明確になっていれば、技術は後から付いてくると考えていいのではないか。もちろん、安全性の確保が最優先だが」

ルート検索後に地図ダウンロード

―高精細の3次元デジタル地図はデータ量が莫大になる。自動運転車が街中を走るとき、その大量の3次元デジタル地図のデータはどうやって取り込むことになるのか。

「カーナビのように、あらかじめすべてのデータを持っておくという考え方は、できるなら理想なのかもしれない。ただ、実際には難しいし、できたとしてもニーズはないだろう。北海道に住んでいる人がカーナビを買ったとき、そこには沖縄の地図が格納されているけれど、たぶん一度も使わないだろう。しかもそのデータにコストを支払うのは理屈に合わない」

「自動運転の地図は、一般道の自動運転サービスに限っていえば、自分がいつも走るところ、突き詰めれば『今から走るルート』があればいい。私の実装イメージは、行き先をカーナビに入力して検索し、出てきたルートの中から『この地図で自動運転できます』というルートを選択したときに、自動運転車がそのルートの3次元デジタル地図をダウンロードするというもの。画面に『ダウンロード終了。自動運転スタートしますか?』と表示されて、『はい』を選ぶと自動運転が始まる」

―自動運転車の開発では、開発者が走行環境を具体的に設定し、その環境であれば各種の技術が適切に動作して安全走行できるようにしている。この「自動運転車が設計通りに動作する環境」は「ODD(限定領域)」と呼ばれており、どのようなODDを設定するかによって、安全性が大きく異なるという。自動運転を用いたサービスを設計する際、ODDはどのような観点で設計することになるのか。

「ODDの設定は、現地でどのようなサービスにするかによって決まる。自動運転は24時間365日働かせることができる。だから、夜中に走らせることに意義があるなら、そういうODDにすることもできる」

「見方を変えると、制約条件をどう付けるかということでODDは決まる。大雨が降ったら止めるとか、台風の予報が出たら止めるとか、安全運転に支障のある環境を加えていくことで作るのがODDだ。具体的には、時間帯、天気、道路の種類(走行ルート)、車線、経路などの観点で決めていくことになるだろう。現段階の技術に照らして考えると、ODD設計を適切に設定すれば、時速30キロメートルくらいまでの速度なら完全自動運転で走行できるとみている」

―完全自動運転車での移動サービスは、動く個室のサービスともいえる。いろいろな可能性があるのではないか。

「その通りだ。車室空間をどのように利用するかで、本当に多くのアイデア=ビジネスモデルが生まれてくると思う。例えば自治体での運営を考えれば、地域の観光地やお店の宣伝だけでなく、観光地やお店までの足として使うことになれば、どこかの企業がスポンサーになってくれるかもしれない。生活の足としての活用だけでなく、自由な発想で様々な使い方を考えれば、自動運転を用いた新しいビジネスモデルが生まれるかもしれない。そうした新しい活用が広がることを期待している」

この記事は日経BP総研 クリーンテック ラボの研究員が執筆し、日本経済新聞電子版のテクノロジー分野「自動運転」に「自動運転が作る未来」として掲載したものの転載です(本稿の初出:2018年11月12日)。