「すでに我々は、2つの環境でレベル4を実現している。1つはブリヂストンのテストコースにおける無人運転。もう1つはコマツと一緒に実施している鉱山でのダンプの自動運転だ。どちらのケースも私有地における自動運転だから、道路交通法を気にせずにドライバーレスを実現できる」

ブリヂストンのテストコースを走行するZMPの自動運転車(出所:ZMP)

「ブリヂストンはこれまで、専門のテストドライバーが何時間も寸分たがわず同じコースを走ることで、タイヤを評価していた。ドライバーにかかる負荷はかなりのものだ。そこで我々の自動運転技術を用いて走行するようにした。自動運転車は、何時間でも正確に同じコースを高速走行できるので、テストドライバーに負荷をかけずに済むようになった」

「レベル4の実用化を進めている新たな空間としては空港がある。これは国土交通省が進めているプロジェクトで、公募に応募してテストを受けて実施事業者に選定された。今はサポートドライバーを乗せて実験しているところだが、20年にはドライバーレスのレベル4で実用化できるメドが立っている」

レベル4は地域ごと みんな必死でやっている

―米国では(グーグルの親会社アルファベット傘下の)ウェイモやGMクルーズが公道テストの実績を積み重ねており、年々サポートドライバーが関与する頻度が少なくなり、自動運転技術の性能・品質が高まっている。海外の動きをどうみるか。

「実をいうと、海外の動向は全くみていない。なぜなら、自分が取り組んでいるエリアでのレベル4の実現に必死だから。以前、彼らと話したことがあるが、彼らも自分たちの取り組みに必死だった。レベル4を実現するには、自分たちが取り組んでいるエリアのことを深く知らなければならない。他のエリアでの取り組みは、交通状況も道路地図も違うから参考にならない。結局、レベル4は地域ごとに取り組まなければならない」

「米カリフォルニアと東京都心の交通事情は全然違う。例えば、カリフォルニアは道が広いから全地球測位システム(GPS)はどこでも電波が入る。東京都心は道が狭い。しかも高層ビルが多く、首都高もあるから、一般の公道ではGPSが入りにくい。そうした環境では、正確な自車位置を把握するためにGPSに頼らない位置測定技術が必要になる」

―18年8月、日の丸交通(東京・文京)と一緒に大手町─六本木間での自動運転タクシーサービスの実証実験を実施した。都心でテストしたメリットは何か。

「自動運転車の実証実験はいろいろあるが、東京のど真ん中でやったのは我々だけだ。都心で公道走行するのは簡単ではないが、自動運転を実行する人工知能(AI)の学習データを大量に入手できるというメリットがある。地方での実験は比較的簡単だが、そこで得られるデータは限られている」

「都心の公道は、様々な車種のクルマがそれぞれの走り方で走り回っているので、いろいろなシーンに出くわす。同じ経路で走ったとしても、毎回、異なるシーンを経験できる。そこで得られるシーンをデータとして蓄え、AIに学習させることで、複雑な状況でも安全に運転できるように自動運転の品質を高めることができる。たくさんの車種、動き方、渋滞状況などのデータを一気に獲得できるので、一種の加速テスト(大きな負荷をかけて効率を高めたテスト)のような効果がある。難しい都心で安全に走行できるようにしておけば、交通量が少ない田舎なら、なおさら安全に走行できる」

―公道でのレベル4の実用化については、ドライバーレスの公道走行になるので、自動運転車が道路交通法に沿って運転することを誰かが事前にチェックすべきだとの声がある。

「ドライバーレスの公道走行に当たっては、おそらく何らかの検査項目が事前に国から示され、それをクリアすることが求められることになるだろう。我々は今、空港でレベル4の試験を進めているが、政府が作ったガイドラインに沿って自動運転実験を進めており、そこに示された具体的なテスト項目をクリアすることが求められている。テストは検査員がチェックし、それをクリアしないと走行できない。だから、今後はこうした実験を積み重ねて公的な基準が作られていくものとみている。レベル4はエリア限定となるから、それぞれの限定された地域、環境ごとに検査項目が設けられるのではないだろうか」

この記事は日経BP総研 クリーンテック ラボの研究員が執筆し、日本経済新聞電子版のテクノロジー分野「自動運転」に「自動運転が作る未来」として掲載したものの転載です(本稿の初出:2019年4月8日)。