自動運転技術の開発を手掛けるZMP(東京・文京)は日の丸交通(同)と共同で2018年8月、東京都心の大手町─六本木間での自動運転タクシーサービスの実証実験を実施した。ZMPはこの実証実験で、自動運転システムだけでなく、自動運転タクシーを予約するためのスマートフォン(スマホ)アプリ、ルート確認や決済のための車内タブレット用アプリも提供し、アプリと連動する配車プラットフォームを用意した。

(【前回記事】「自動運転レベル2の次はレベル4に進め」ZMP社長

「自動運転+スマホアプリでの予約」は、ここ数年話題に上がる移動サービス「MaaS(モビリティー・アズ・ア・サービス、マース)」の次のかたちを予感させる。ZMPの谷口恒社長は「遠隔監視は自動運転の必須機能。その機能を使えば配車プラットフォームもすぐにつくれる」と自動運転だけでなく、MaaSの基盤となる配車プラットフォームの提供にも意欲をみせる。谷口社長に自動運転車の社会実装について聞いた。

ZMP社長の谷口恒氏(写真:北山宏一)

―レベル4(一定条件下での完全自動運転)での自動運転となると、タクシー会社のような運行事業者が自動運転車両を用いて、エリア限定の移動サービスを提供する形態が一般的になるとみられる。こうした実用化をどう見るか。

「適切だ。自動運転は歴史が浅いし、機械も未熟だ。運用責任は明確でなければならない。こうしたことを考えると、最初は専門の保守や管理のスキルを身につけた法人が責任を持ってユーザーに利用してもらうかたちで実用化されるべきだ」

危険回避はクルマが判断

―レベル4の自動運転車をドライバーレスで走らせることに関しては、日本でも米カリフォルニア州でも、実証実験の段階から遠隔監視を義務づける動きが広がっている。遠隔監視は必要なのか。

「ドライバーレスでの運用を考えると、車にドライバーがいないのだから、何かあったときにその場を確認できる仕組みが必要になる。自動運転機能が正常だったとしてもクルマが故障することもある。コントロールセンターを設けて、そこで走行するドライバーレス車両を常時見守る運用が欠かせない。我々の自動運転車はカメラを搭載しており、ドライバーが見ている周辺状況をリアルタイムでカメラ映像として遠隔で見ることができる」

―次世代通信規格「5G」の時代になると通信の高信頼性と低遅延が実現される。カメラ映像やセンサー情報を頼りに、ドライバーか自動運転ソフトが遠隔から運転操作を実行するという運用がみえてくるのではないか。

「リアルタイムでカメラ映像を見て、危ないと思ったら遠隔でブレーキ制御を指示してクルマを止めるというような意味だとしたら、現時点で遠隔制御はあり得ない。危険回避は一刻を争うから、クルマがその場で判断しないと制御が遅れてしまう危険があるからだ。その指示を通信に頼っていたら、『通信が途切れました。判断できません』ということになりかねない」

「クルマが故障した場合でも、クルマの中にあるフェールセーフ機能で路肩に止めるといった制御を実施するべきだ。もちろん、停止した後に、周りを見ながらゆっくりと移動させるといった遠隔運転を実行することはあるだろうが、一瞬を争う制御の判断を遠隔側に任せる運用は適切でない」

―日の丸交通と取り組んだ自動運転タクシーの実証実験ではスマホを用いた配車サービスの仕組みもつくった。自動運転車の開発だけでなく、MaaSの基盤となる配車プラットフォームも開発しているのか。

「遠隔監視はドライバーレスの自動運転車を社会実装するための必須機能だ。だから我々は常時、自動運転車を遠隔から監視している。どこに自動運転車がいるのか、実車なのか空車なのか、車両にトラブルはないかなどの状態を把握している。この車両の監視・管理データを使えばすぐに配車プラットフォームをつくることができる。そして我々は、自動運転機能を組み込んだ車両だけでなく、自動運転車両の遠隔監視システムも開発している」