自動運転技術の開発競争は(1)走行環境を限定した形での完全自動運転を実現する自動運転技術「レベル4」の実用化(2)完全自動運転の「ロボタクシー」や自家用車での新機軸となる技術の提案(3)次世代の移動サービス「MaaS(マース)」時代を見据えた新たな協調と競争――が始まっている。

レベル4の実用化に当たっては、自動運転技術の開発企業と自動運転技術を自社サービスに取り込む運営企業との協業活動が本格化している。具体的なサービスとしては、自動運転車を用いたロボタクシーサービスと、物品を宅配する場面で小売企業が導入する無人配送サービスがある。日経BP総研クリーンテックラボが2019年3月に発行した「世界自動運転・MaaS開発総覧」の調査データを基に、最新事情を交えてレベル4の実用化状況を報告する。

米ウェイモ、有料の本サービス開始

18年12月、米アリゾナ州フェニックスで、自動運転車を用いた有料のオンデマンド配車サービス、いわゆるロボタクシーサービスが始まった。手掛けるのは自動運転車の公道走行実績で先頭を走る米グーグル系の米ウェイモ。サービス名称は「ウェイモ・ワン」だ。

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(左)ウェイモ・ワンで用いられているレベル4の自動運転車(出所:ウェイモ)
(右)自動運転車の車内に設置されている乗客向けディスプレーの表示例(出所:ウェイモ)

専用スマートフォンアプリを立ち上げて乗車場所と目的地を指定すれば、自動運転車は利用者が指定した乗車場所まで自走して利用者を乗せて、目的地まで運んでくれる。使い勝手はオンデマンド配車サービスと変わらない。

ウェイモは万一のトラブルに備え、当面はバックアップドライバーを乗車させる。またウェイモ・ワンを利用できる利用者も、しばらくはウェイモの実証実験に参加してきたユーザーに限定している。

ウェイモは19年5月、フェニックス地域でのロボタクシーサービスを拡充し、米リフトとの共同提供も開始すると発表した。リフトのアプリからウェイモの自動運転車を呼び出せるようにする。両社は17年5月にロボタクシーサービスの実用化で提携していたが、具体的な協業活動はこれが最初となる。

米スタートアップが実用化を推進

ロボタクシーサービスに用いられる自動運転車は、レベル4と呼ばれる「特定の走行環境下で完全自動運転できるクルマ」である。環境を特定すれば、その地域の交通習慣を含めた自動運転技術の習得が容易になるほか、危険な交差点の対処法などの安全性確保の対策を手厚く実施できるようになる。加えて、その地域での社会受容性を高めることにもつながるため、実用化の道が近づく。

こうした考え方に基づいて、米国ではいくつもの地域でロボタクシーサービスの実証実験が始まっている。例えば17年2月に米カリフォルニア州パロアルトで起業した米ボヤージュは、レベル4の自動運転車の開発に加えて、ロボタクシーサービスの事業化に向けた活動も進めている。将来はロボタクシーサービスの海外展開も視野に置いているが、まずは特定地域に絞ってロボタクシーサービスを提供し、ノウハウを獲得する考えだ。

ボヤージュがサービス提供の場所として選んだのは、交通量がそれほど多くなく、犯罪が少なく、人口が増加している地域である。具体的には、米カリフォルニア州サンノゼと米フロリダ州にある退職者コミュニティー「ザ・ビレッジ」。この地域の住民にロボタクシーサービスを提供している。自動運転のコア技術には、米レノボが開発したレベル4の自動運転プラットフォーム「アウェア」を採用した。