東京とロンドン、タクシー会社が推進

ウェイモがリフトと提携してロボタクシーサービスの拡大を図るように、自動運転開発企業とサービス運営企業が共同でロボタクシーサービスを提供するという構図は、レノボとボヤージュのほかにもある。東京とロンドンでは、タクシー会社が自動運転開発企業と共同でロボタクシーサービスの実用化に取り組んでいる。

東京でロボタクシーサービスの実用化を目指しているのは日の丸交通(東京・文京)。18年8月、自動運転開発で実績があるZMP(同)と共同で、大手町─六本木間での自動運転タクシーサービスの実証実験を実施した。限定ルートであるが、有料でのサービス提供である。

大手町─六本木間を走行する自動運転タクシーの様子。安全性を確保するためにドライバーが同乗している(出所:ZMP)

大手町─六本木間を走行する自動運転タクシーの様子。安全性を確保するためにドライバーが同乗している(出所:ZMP)

英ロンドンでは、18年10月、プライベートハイヤー大手の英アディソン・リーグループが自動運転開発企業である英オックスボティカと戦略的パートナーシップを締結した。目的は21年までにロンドンでロボタクシーサービスを提供すること。自動運転車の開発と運用で協力する。共同作業の第一弾として、ロンドン市内および周辺の25万マイルを超える公道の詳細なデジタル地図の共同作成に着手した。自動運転車の運行に備えて、すべての縁石、道路標識、ランドマーク、および信号機の位置をデジタル地図に記録する予定だ。

無人配送に乗り出す小売企業

ロボタクシーサービス同様、限定したエリアでの自動運転車の実用化は小売企業の宅配サービスの場面でも具体化している。この市場を狙い、自動運転機能を備えた専用の無人配送車を開発するスタートアップがいくつも登場しており、小売企業と共同で自動配送サービスの実証実験を始めている。

例えば自動配送車開発のスタートアップ、米ニューロは18年12月、米スーパーマーケット大手のクローガーの系列店フライズ・フード・ストアと共同で、アリゾナ州スコッツデールにおいて無人配送車「R1」を用いた無人配送サービスを開始した。配達商品と配送場所の指定と、無人配送車のドアの開閉は、利用者がスマホアプリで実行する。

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(左)アリゾナ州を走行するニューロの無人配送車「R1」(出所:ニューロ)
(右)ニューロの無人配送車「R1」のドアをスマホアプリで開けたところ(出所:ニューロ)

19年1月にはスーパーマーケットチェーンの米ストップ&ショップが自動配送車開発のスタートアップ米ロボマートと提携し、19年春からマサチューセッツ州ボストン市を中心とするグレーターボストン地域で無人販売車を用いた食料品販売を開始すると発表した。農産物や食材キットをユーザーに提供する。

利用者はスマホアプリでロボマートの車両を呼び出してドアのロックを解除し、果物や野菜などの購入商品を取り出す。買い物が終わったら、ドアを閉めて車を返却する。車両が備える無線自動識別(RFID)と「コンピュータービジョン」技術によって、チェックアウト処理することなく決済される。どの商品が購入されたのかは自動的に記録され、領収書が数秒以内に電子メールで顧客に送られる。

ウォルマート、3種類の自動運転車を実験

米小売企業の中で、自動運転車の活用に積極的なのはウォルマートだ。同社は自動運転機能の活用で業界の先頭を走ることを宣言しており、米フォード・モーター、ウェイモ、自動配送開発のスタートアップである米ユーデルブと提携し、それぞれ異なるエリア、用途で実証実験を続けている。

フォードとの実証実験は、米フロリダ州マイアミで実施している。18年11月に明らかにした。目的は新鮮な食料品を配送することである。同地域ではフォードと米食品宅配ベンチャーのポストメイツが18年6月から共同で自動運転車を用いた配送実験を始めているが、ウォルマートはその仕組みも利用している。

ウェイモとは18年7月に提携した。ネット注文したウォルマートの顧客をウォルマート店舗にウェイモの自動運転車で送迎する試験サービスを、アリゾナ州フェニックスで実施している。

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(左)ウォルマートの食料品配送にも用いられているフォードの自動運転車(出所:フォード・モーター)
(右)ウォルマート店舗に顧客を送迎するウェイモの自動運転車(出所:ウォルマート)

19年1月にはユーデルブと提携し、同社の自動配送車「ニュートン」を用いた自動配送実験をアリゾナ州サプライズで始めることを発表した。ニュートンは、最大32の注文を同時に受け付けて配送できるように、全部で32の荷室を備える。ドアの開閉や荷室の開閉はスマホアプリで実行する。

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ウォルマートが自動配送実験で使用するユーデルブの自動配送車「ニュートン」(出所:ユーデルブ)

ウォルマートの実験例からわかるように、レベル4の自動運転技術の活用場面はロボタクシーサービスだけではない。多くの企業は、人とモノの移動を前提にビジネスを構築している。レベル4の自動運転技術をスマホアプリと組み合わせれば、移動に新たな価値をつくり出せる。ビジネスの効率化はもちろん、事業機会を拡大したり、事業に新たな魅力や利便性を組み込んだりする場面でも活用できる新たなソリューション技術として進化する可能性は十分にありそうだ。

この記事は日経BP総研 クリーンテック ラボの研究員が執筆し、日本経済新聞電子版のテクノロジー分野「自動運転」に「自動運転が作る未来」として掲載したものの転載です(本稿の初出:2019年6月11日)。