次のテーマは「異常時の自動停止」と「自動バレーパーキング」

市販車に実装する自動運転機能については、先行車との間に安全な車間距離を維持する機能、車線中央の走行を維持する機能、渋滞時に先行車を自動追従する機能などに加えて、自動駐車と高速道路での車線変更や危険回避の自動実行機能の実装が始まっている。自動車メーカー各社は2020年頃に高速道路での自動運転の実現を目標に掲げているが、それとは別に開発を急いでいる自動運転技術が二つある。どちらも自動車の価値を高めることに直結する機能である。

一つは、ドライバーが運転中に急病になったり、睡眠状態に陥ったりしたときに、安全にクルマを停止する機能である。これは、世界的に参照されている米国の非営利団体SAE Internationalが作成した自動運転レベル4の基準「システムが運転操作をドライバーに要請した際に、ドライバーがその要請に応えない場合はシステムが対応を引き継ぐ」を満たすために欠かせない機能といえる。2016年にDaimlerが発表した自動運転機能「ドライブパイロット」はこの機能を搭載している(写真2)。

(写真2)ドライブパイロットを搭載する新型Eクラス

もう一つは自動バレーパーキングである。バレーパーキングとは、ホテルなどで実施されている、駐車場の入出庫を係の人に依頼する駐車サービスのこと。自動バレーパーキングは自動駐車の高度版に位置付けられる機能で、スマートフォンを使って駐車場から自分のいる場所まで自動運転車を自走させて呼び出すことができ、駐車場に入ってクルマを降りたらクルマが自走して空車スペースを見つけて自動駐車する。「自走するスマート端末」ならではの機能といえるだろう。

自動バレーパーキングの開発は自動車部品サプライヤーも積極的に進めており、独Bosch、独Continental、仏Valeo、独ZF Friedrichshafenなどがそれぞれソリューション開発を進めている。またDaimlerとBoschは、自動バレーパーキング実施時に空車スペースを適切に見つける技術を開発するための共同プロジェクトを始めている。

自動運転車が目指す二つの姿

各プロジェクトが目指している自動運転車の姿は大きく二つに分かれる。それは、人間のドライバーが乗ることを前提とするかしないかの違いである。SAEの自動運転レベルに照らして言えば、ドライバーが存在するケースはレベル0~4で、ドライバーが存在しないケースはレベル5となる(図2)。

(図2)自動運転車の姿は、ドライバーの存在を前提とするかどうかで分かれる

自動車メーカーや自動車部品サプライヤーは、基本的にドライバー支援を目的に自動運転技術の開発を進めている。これに対し、最初からドライバーレスの完全自動運転車を作ることを目的とする取り組みもある。例えば前述の自動運転バスや、米Google(グーグル)のSelf-Driving Carが該当する。

ドライバー支援とドライバーレスのそれぞれの開発は、条件と優先すべき事項に違いがあるため、同じ技術を用いる部分はあっても、できあがった自動車の特性は違ったモノとなる。

ドライバー支援を優先して自動運転車を開発する企業は、できるだけ今ある自動車の能力や快適さを維持したいと考えている。これに対してドライバーレスを志向する企業は、今ある自動車よりも劣る部分がいくつかあったとしても、ドライバーレスが実現するのならそうした部分が受け入れられると考えている。運転性能、巡航速度、乗り心地を我慢しても、ドライバーレスで安全に、効率的に、手軽に移動できることを優先する。

バスやタクシーについては、自動車としての性能を犠牲にしても完全自動運転を求める考えがある一方で、トラックに関しては今の運転性能そのままで、できる部分だけ自動運転に変えていくというアプローチが取られている。

これは、貨物の積み下ろしなどの仕事をトラックドライバーが請け負っていることもあって、ドライバーレスの実現が難しいことにも関係しているだろう。例えば米Freightliner Trucksが2015年に発表した自動運転トラック「Freightliner Inspiration Truck」はHighway Pilotと呼ぶ自動運転システムを備えるが、商用運転免許証を持つドライバーがトラック車内に残ることを前提としている。

トラック向けの後付け自動運転機構を開発中の米Otto(米Uber Technologiesが2016年8月に買収したが経営は独立)も、トラックドライバーが乗車することを前提としており、今のトラックの性能を維持した上で、ドライバーの負担を減らすことを目的に自動運転技術を開発している。

※この記事は日経BP総研 クリーンテック研究所の研究員が執筆し、日本経済新聞電子版のテクノロジー分野のコラム「自動運転」に掲載したものの転載です。