公共交通に関与する姿勢強める

半面、自動車依存は高まるばかりだ。新潟都市圏パーソントリップ調査によれば、新潟市を中心とする都市圏域で代表的な移動手段として自動車が占める割合は1978年度には41.0%だったが、1988年度には52.0%に高まり、2002年度には70%近くに達している。同じ調査を実施する全国の都市圏の中でも際立って高い数値だ。

こうした時期に乗り合いバス事業の需給調整規制を定めていた道路運送法が改正される。改正法施行後の2002年2月以降は、需給調整規制の廃止によってバス路線の廃止が許可制から事前届け出制に見直され、不採算路線からの撤退が原則自由になったのである。新潟交通はこれを受けて2003年1月、24路線の廃止を届け出ている。

これに、市が危機感を募らせた。市都市政策部都市交通政策課課長補佐の丸田喜之氏は「市は交通事業者に対して対案を提示できる立場になかった。これをきっかけに、公共交通のあり方を交通事業者任せにするのではなく、市も一緒になって考えていく必要があると認識するようになった」と振り返る。

公共交通とはいえ、路線バスの運行はあくまで民間事業。利用者の減少に対して便数削減や路線廃止という形で応じざるを得ない。しかしそれでは、さらに利用者の減少をもたらすという悪循環に陥りかねない。公共交通が負のスパイラルに巻き込まれていくのを食い止めるため、市は自らの関与を強める姿勢に転じたというのである。

一方、市はこの当時から、中心部に公共交通を導入し、にぎわい創出につながる基幹公共交通軸を形成する、という考え方を打ち出していた。その後、2010年8月には「新たな交通システム導入検討委員会」を設置し、具体的な検討を開始。1年半後の2012年2月には、その提言を踏まえて「新たな交通システム導入基本方針」を公表し、BRTを公設民営方式で導入する考えを明らかにした。

公設民営という事業方式の中で市が受け持ったのは、乗り換え拠点になる交通結節点の整備、運行事業者に無償貸与する連節バスの購入、情報案内システムの整備など、BRTの運行に必要な施設・設備やシステムの整備である(表1)。合計事業費は約11億7000万円。その半分は国の社会資本整備総合交付金で賄ったという。

(表1)新潟市がBRT萬代橋ラインの運行開始までに投じた事業費の内訳。第1期導入区間では、BRT専用走行路の整備や連節バスの追加購入も見込む。それらの事業費まで含めると、総事業費は約30億円の見通しという(資料:新潟市)

RapidでなければBRTでない

新潟交通に対しては、BRT萬代橋ラインの運行、維持管理、車両基地の空間確保のほか、BRT萬代橋ラインとバス路線の合計年間走行キロ数を2019年度まで約957㎞に維持することを求めた。この数値は、2014年3月時点の路線バス全体の年間走行キロ数の計画値。BRT運行開始の1年前に新潟交通との間で締結した協定書にそれを織り込むことで、バス路線の縮小・廃止に歯止めを掛けたのである(図2)。

(図2)新潟市と新潟交通は2014年4月、「新バスシステム事業にかかる運行事業協定」を締結し、互いの役割分担などを定めた。同年9月には、「新バスシステム事業の運行事業協定に関する細目協定」を締結し、年間走行キロ数を定めた(資料:新潟市)

これまでのBRTの効果について、市新交通推進課の小林氏は「路線バスの増便や『シニア半わり』などの効果で利用者の減少には歯止めを掛けられている」と評価する。「シニア半わり」とは、市内在住の65歳以上を対象にした運賃半額サービスだ。

確かに、BRT萬代橋ラインは郊外部との間を結ぶ路線バスの維持には役立っていると言えよう。ただ、それがにぎわい創出につながる基幹公共交通軸として機能しているとまでは、いまはまだ言い難い。

もともと市が想定する基幹公共交通軸は新潟駅をはさみ反対側に位置する鳥屋野潟近くの市街地までを環状に結ぶ広域のもの。その一部は新たな交通システム導入基本方針の中で第2期導入区間に位置付けられている(図3)。先行きは見通せないが、唯一確かなことは、新潟駅ではJR在来線の連続立体交差事業によって2022年度をめどに高架下に新しく交通広場が整備され、駅の南北が結ばれるようになることだ。第2期導入区間へのBRTの運行に向けた道筋は、自ずと開かれることになる。

(図3)今後は、新潟駅と中心市街地の間にBRT専用走行路を整備する一方、JR在来線の高架化でつながる第2期導入区間にBRTを延長するか、LRT(次世代型路面電車)に切り替えるか、検討する予定。図中の黄色の部分が、基幹公共交通軸(資料:新潟市)

問題は、基幹公共交通軸を担うBRTの哲学をどこまで貫けるかだろう。

市の「新たな交通システム導入検討委員会」で委員長を務めた横浜国立大学理事・副学長・教授の中村文彦氏は、「BRTの『R』は『Rapid』。それを実現できなければ、BRTではない」と言い切る。信号制御や運賃収受などの仕組みにいわゆる速達性を確保する仕掛けを組み込めなければ、路線バスと同じ位置付けになってしまいかねない。

そこで問われるのは、一般の自動車交通との関係性だ。中村氏は「『Rapid』と並ぶBRTのもう一つの哲学は、クルマを優先しないということ。中心部では朝夕のピーク時に場所を限ってBRTを優先することも不可欠だ」と指摘する。

高齢化が進み、自動運転が社会に受け入れられるようになれば、シェアリングサービスの活用も含め、自動車依存はますます強まっていくだろう。その時、公共交通はこれまで以上に必要とされなくなっていく恐れもある。にぎわい創出につながる基幹公共交通軸の形成を目指すなら、クルマ社会に正面から向き合っていくことが欠かせない。