都市部のモビリティがますます多様化していきそうだ。注目は、自分のペースで、比較的安価に利用できるカーシェアリング。国は2016年12月から鉄道駅近くの道路空間をその発着拠点として開放し、鉄道との乗り換えを想定したカーシェアの社会実験に取り組む。「賢く使う」ことが求められる道路空間の新しい活用法を、カーシェア事業が切り開く。

会員カード登録を済ませスマートフォンでクルマの取り置きさえしておけば、鉄道駅を降りてぱっと使える――。その手軽さが、魅力の一つだ。鉄道駅近くの道路空間を発着の拠点として用いるカーシェアリングなら、鉄道との乗り換えもそう苦にならない。

東京にはいま、その拠点が2つある。

一つは、東京メトロ東西線大手町駅に近い国道1号沿い。丸の内永楽ビルディングの目の前だ(写真1)。もう一つは、JR新橋駅や都営浅草線新橋駅に近い第一京浜(国道15号)沿い。新橋東急ビルの目の前である(写真2)。

(写真1)大手町のステーションは円滑な出入りを可能にするように歩道の一部を台形に切り欠いた。ステーションと車道との間には、車道からクルマが誤侵入するのを防ぐ電動昇降型のライジングボラードを設置する(写真:茂木俊輔)
(写真2)新橋のステーションは大手町と違って車道側にせり出させる造り。車道との間はチェーンゲートで仕切る。ただそのほかは、大手町と共通だ。車道との間に縁石を埋め込み、ステーション部分を着色し、車道との違いを強調する(写真:茂木俊輔)

ともに、関係行政機関らで組織する「道路空間を活用したカーシェアリング社会実験協議会」が実施する社会実験用に設置された。公募で実験参加者に選定され、この2つの拠点を用いてカーシェアリングサービスを展開するのは、パーク24である。

同社は2015年10月からトヨタ自動車と共同で、東京都心部を中心とするワンウエイ(乗り捨て)方式のカーシェアリングサービス「Times Car PLUS×Ha:mo(タイムズカープラスハーモ)」に実証実験として取り組む。社会実験でも、この仕組みを利用する。

利用者は、グループ会社のタイムズ24が展開する「タイムズカープラス」という会員制のカーシェアリングサービスにまず入会する。会員は専用アプリやパソコンで「出発地」と「目的地」を選択して車両を取り置き、30分以内に利用を開始する。

「出発地」や「目的地」には、「Times Car PLUS×Ha:mo」で江東区や中央区など都心区から東寄りの8区・97カ所(2018年6月現在)に用意するステーションも選択できる。これらは基本的には、タイムズ24が運営する駐車場の一角に用意されている。

車種は、トヨタ車体の一人乗り電気自動車(EV)「COMS(コムス)」(写真3)123台と、トヨタ自動車の同じく一人乗りEV「i-ROAD(アイロード)」5台(2018年6月現在)。ともに道路運送車両法で定める第一種原動機付自転車。自動車の保管場所の確保等に関する法律、いわゆる車庫法は適用対象外のため、サービス利用者は乗り捨てが可能だ。ただし「i-ROAD」の運転には事前講習などが義務付けられる。

(写真3)大手町のステーションに置かれていた一人乗り電気自動車(EV)「COMS」。パーク24の公表値によれば、1充電の走行距離は50㎞程度。大手町と新橋には備え付けられていないが、ステーションの中には充電器が設けられているところもある(写真:茂木俊輔)

乗り捨ては短時間・短距離の移動を担う

時刻表に従って運行する路線バスと違って自分のペースで利用できる自動車交通としては、料金は比較的安い。「COMS」であれば、15分206円。このほか会員カード発行手数料1550円や月額基本料金1030円が本来なら必要だが、無人入会機で入会した場合はカード発行手数料が掛からず、しかも大手町のステーションに設置された機器(写真4)で2019年3月までに入会すれば、月額基本料金も3カ月無料になる。

(写真4)大手町のステーションに設置されている無人入会機。この機器を用いれば、入会手続きを24時間いつでも済ませることができる。情報入力、カード情報登録、オペレーター接続、会員カード登録、という手順で最短10分という(写真:茂木俊輔)

社会実験の開始は、大手町は2016年12月から、新橋は2018年3月から。終了はともに2019年3月を予定する。道路ネットワーク機能を最大限に発揮できるように、鉄道交通と道路交通のつなぎを良くして道路を「賢く使う」のが、大きな目的だ。