実験開始以降、どのように利用されてきたのか。大手町のステーションに関しては、途中段階ながら2017年8月までの利用実態も明らかになっている。

まず、時間帯別利用回数だ(図1)。朝7~8時は大手町着の移動(トリップ)が圧倒的に多く、夜18時以降は逆に大手町発の移動が大部分を占める。朝、都心に向かい、夜、都心から離れる、という一般的な人の流れと連動した傾向が見て取れる。

(図1)2016年12月から17年8月までの時間帯別利用回数。朝7~8時は大手町着のトリップ(移動)が多く、夜18時を超えると逆に大手町発のトリップが多くなる。大手町を出発し再び戻る大手町発着のラウンドトリップは日中に集中する(資料:国土交通省東京国道事務所)

次に乗車時間別利用回数(図2)を見てみよう。大手町発も大手町着もともに、最多は10~19分と短い。平均値を取ると30分を少し上回るが、これは90分以上の利用が含まれていることから、利用時間の合計が押し上げられたため、とみられる。

(図2)2016年12月から17年8月までの乗車時間別利用回数。乗車時間の最多は10~19分と短い。利用車両が「COMS」なら利用料金は数百円で済む計算だ。利用時間が90分以上と長い場合は、ラウンドトリップである可能性が高い(資料:国土交通省東京国道事務所)

最後に乗車距離別利用回数(図3)を見ると、大手町発も大手町着も2~6kmの利用が多く、短距離移動を担っていることが分かる。乗車時間別利用回数の結果と併せて考えれば、短時間・短距離の移動に利用されていることが明白だ。

(図3)2016年12月から17年8月までの乗車距離別利用回数。2~6kmの利用が多く、短距離の移動を担っていることが分かる(資料:国土交通省東京国道事務所)

これらの結果から読み取れる一つのニーズは、ステーションの最も多い江東区の住宅地との間を行き来する通勤とみられる利用だ。協議会の事務局を務める国土交通省東京国道事務所交通対策課課長の五味康真氏はこのほか、目的地に向かうだけではない、まちなかを回遊するような利用も認められるという。

どこにステーションを設置するかがカギ

「2017年9月までのGPSデータから大手町を出発し再び大手町に戻るラウンドトリップの経路を分析すると、秋葉原・上野や渋谷・新宿方面など、ステーションが近くにないエリアにも立ち寄っていることが分かる」

国交省との社会実験用に設置された大手町や新橋だけでなく、トヨタとの実証実験用に設置するステーション全体の発着データを見ているパーク24では、それらとは異なる利用方法も明らかにする。

同社モビリティ研究所TCP×Ha:moグループグループリーダーの佐藤将弘氏は「公共交通を乗り継いで行き来する湾岸エリアへの利用や公共交通が運行しない深夜・早朝の時間帯の利用なども見られる。一定の傾向は見えてきた」と言う。

各種のニーズが見込めそうな中、乗り捨てサービスの可能性はどうみているのか。

その有用性はまさに、トヨタとの実証実験である「Times Car PLUS×Ha:mo」を通して探ってきた点。目的地への直接移動、公共交通との連携利用、ビジネスシーンでの利用など、あらゆる近距離ニーズへの乗り捨てサービスの有用性を検証してきた。

佐藤氏は現段階での可能性は認めるものの、一方で課題も指摘する。「課題は、乗り捨て先のステーションはどのような場所に確保するのがいいかという点だ。どのような場所であればニーズがより見込めるのか、いま精査している」。

利用者層が気軽に便利に乗り降りできる場所にステーションネットワークを事業性を確保しながら整備できるか――。それが、乗り捨てサービスの生命線を握ると言っていい。

その点、大手町や新橋のような鉄道駅に近い路上ステーションは優位という。佐藤氏は「電車を降りてからの接続性が良く、顧客にとってアクセスしやすい。実際、大手町も新橋も99カ所あるステーションの中で利用度は上位にランクインしている。路上ステーションが広がるといい」と、期待をにじませる。

利用者からの評判も、まずまずだ。2017年8~9月までの約1カ月間に実施した利用者アンケートで大手町ステーションの利便性を聞いたところ、回答者全体の約8割が「便利」「やや便利」と回答。同じような路上ステーションの増設希望を尋ねると、やはり約8割が「そう思う」と答えたという。

ルール明確化でステーション設置広める

路上ステーションの設置には道路を管理する公共も前向きだ。大手町や新橋の路上ステーションを設置する国道の管理者である国は、「道路のオープン化」を目指す中でその設置を推進する考えを明らかにしている。

国交省の社会資本整備審議会道路分科会が2017年8月にまとめた建議「道路・交通イノベーション」。そこでは、「シェアサイクルやカーシェアなどを公共交通を補完する交通手段として位置付け、道路空間上へのシェアポートの設置も含め、利活用を推進することが必要である」と訴える。

とはいえ、どのような手続きの下、誰の負担で、どのようなステーションを、どのように整備するのか――。整理すべき課題は少なくない。

社会実験を実施する協議会は、①ステーションを道路上に設置する必要性が認められる条件、②ステーションに必要な設備や施設の設置計画・設計に関する留意事項、③設置手続きや運営に関する留意事項――など必要な項目を検証し、結果を踏まえてステーション設置のための留意事項をまとめる予定だ。国交省東京国道事務所の五味氏は「こうしたルールを明確にすることによって、ステーションの設置を広めていきたい」と、意欲を見せる。

その中では例えば、ステーションの整備・運営手法にも言及されることになる見通しだ。社会実験では、大手町のステーションは国交省東京国道事務所が整備しパーク24が無償で使用するのに対し、新橋のステーションはパーク24が道路占用許可申請の手続きを経て自ら整備し占用料を負担しながら運営する。手法をあえて変えることで、その違いを検証し、結果を留意事項に盛り込む考えという。

社会実験の中ではいま、都区道への展開も検討中だ。整備・運営手法をあえて変えたように、国が管理する道路以外にもステーションを設置し、異なる条件の下で検証していこうという狙いだ。「そこでもカーシェアリング事業が成り立つかを検証する。国道以外でも成り立つようなら、ステーション設置の可能な範囲はより広がる」(五味氏)。

道路空間上に新しいモビリティの拠点が生まれるのは、そう遠くないかもしれない。