オープンイノベーションの舞台に

この事前調査では、通行量を測定するセンサーとして具体的に何を用いるかを、その精度の高さや来訪者にとっての違和感の有無という観点から検討。さらに、通行量の予測データを基に空調の最適制御を実施した場合、省エネ効果をどの程度見込めそうかを、シミュレーションによって確かめた。そこで、一定の効果が得られそうであることが明らかになったことから、実証実験の実施に踏み切った。

三井不動産側の期待はどこにあるのか――。

同社ではかねて、ICT(情報通信技術)の進展をまちづくりにもっと生かせないかという問題意識を抱いていた。2017年2月には、清水建設や日本アイ・ビー・エムと共同で、スマートフォン・アプリを活用した音声ナビゲーションシステムの実証実験にも取り組んでいる。このシステムは、近距離無線技術「ビーコン」とスマホアプリで分かる位置情報を活用し、あらかじめ対話を通して設定した目的地までその利用者に合った経路を音声で誘導するもの。対象エリアは、「COREDO室町1」「COREDO室町2」「COREDO室町3」の3つの商業施設と周辺の地下街、合計約2万1000㎡の空間だ。

エリア情報活用プラットフォーム「AI×AI」への期待は、エリアの課題発見とそれに対するソリューション開発、それぞれの可能性にあるという。

三井不動産日本橋街づくり推進部事業グループの川瀬康司氏はこう話す。「個別の課題に対応したソリューションを提供するだけなら、そう新しくない。しかしこのプラットフォームには、多様なデータの組み合わせでまだ見えていない課題をあぶり出せる可能性を見込める。さらに、それに対するソリューションを生み出す、オープンイノベーションの舞台としても期待できる」。課題のあぶり出しとソリューション開発への期待という点から言えば、実証実験で主に想定しているテーマ以外にも目を配っていくという。

マネタイゼーションへの挑戦

もちろん、NSRIもNTTも実証実験で主に想定しているテーマはあくまで、基本問題という認識だ。今後、例えば自治体や交通事業者など新しいプレイヤーが参画すれば、データに多様性と厚みが生まれ、それらを組み合わせることで、見えていなかった課題があぶり出され、新しいソリューションが生み出されていくことも考えられる。

エリア情報プラットフォーム「AI×AI」をエリアマネジメントに活用していくことで、どのような可能性が開けるのか(図2)。

(図2)日建設計総合研究所と日本電信電話で共同開発するエリア情報活用プラットフォーム「AI×AI」のイメージ。都市開発やエリアに関するビッグデータを、人工知能技術「corevo」を用いて処理し、最適なソリューションを導き出す(資料提供:日建設計総合研究所)

NSRI上席研究員の鈴木義康氏が挙げるのは、エリアマネジメントの効率化と新しいサービスの提供だ。「エリアマネジメントはもっと効率化できるだろう。しかも、例えばトイレ個室の空き状況や飲食店の待ち状況を知らせるなど、新しいサービスの提供にもつながっていく。プラットフォーム上のデータを一部でもオープンにすれば、そうした新しいサービスを提供しようとするプレイヤーの参入も期待できる」。

NTT未来ねっと研究所ユビキタスサービスシステム研究部データ処理研究グループ主幹研究員の社家一平氏も、データの利用可能性を指摘する。「スマートシティのまちづくりにICTやIoTの側面から貢献していくのは会社の方針。その中で課題となるのは、プラットフォーム上のデータの可視化という一次利用にとどまらないこと。データのオープン化による二次利用によって新しいソリューションの提供にも結び付けていきたい」。

民間主導のエリアマネジメントでは活動の財源をどこに求めるかが課題とよく言われる。プラットフォームの活用が効率化と新しいサービスの開発に結び付くのなら、そこに光明を見いだすことができるかもしれない。

三井不動産の川瀬氏によれば、「AI×AI」のように多様なデータを活用し多様な課題への対応を目指すプラットフォームですでに社会実装済みのものは、自身知る限り国内にまだないという。今後、こうしたプラットフォームの活用をエリアマネジメントのマネタイゼーション(現金化)に結び付けていけるのか――。新たな挑戦が始まる。