施設内の利用者の流れを把握し、オープンデータなどと組み合わせ、エリアマネジメントに役立てようとする実証実験が相次いでいる。各種データを一元管理するプラットフォームを構築し、エリアの魅力向上や課題対応に生かすほか、新しいサービスの提供につなげる狙いだ。言わばまちのスマート化。後編では、札幌市で進められている取り組みを紹介する。

2016年度から3年度にわたって札幌市内の地下歩行空間でのICT活用実証実験に公民連携で取り組むのは、民間事業者5法人で2017年6月に組織された「札幌市都心版データプラットフォーム活用コンソーシアム」である。同コンソーシアムの代表理事は、歌声合成ソフトのキャラクター「初音ミク」を企画・開発したクリプトン・フューチャー・メディア(札幌市)が務める。

この地下歩行空間は、札幌市営地下鉄のさっぽろ駅と大通駅を結ぶ札幌駅前通地下歩行空間。通称「チ・カ・ホ」だ(写真1)。札幌市と国が札幌駅前通の地下に幅員20m・延長約520mの歩行空間を整備し、2011年3月に開通させた。地上部分の駅前通の歩道と階段やエレベーターでつながるほか、駅前通の沿道に立地するビルとも間口の広い接続空間や通常の出入り口でつながる。北海道開発局が2016年3月に公表した札幌市との共同調査の結果によれば、歩行者数は2015年9月の平日で1日5万5000人、休日で同4万4000人という。

(写真1)札幌市の地下歩行空間「チ・カ・ホ」は、市営地下鉄さっぽろ駅と大通駅を結ぶ約520mのスタイリッシュな造り。道路法上は歩行者専用道路に該当する(画像提供:札幌市)

ただの地下歩道ではない。

幅員20mの両端4mは民間事業者も管理者の承認を得て料金を納めれば物販やイベントのスペースとして使用できる地下広場(写真2)。市は札幌駅前通地下広場条例を制定し、そこを「憩いの空間」と位置付け、道路法20条に定める兼用工作物として道路管理者との間で管理協定を交わすことで、その設置を実現した。にぎわい創出に向けた道路空間活用の一手法である。

(写真2)地上部分が交差点の箇所は「チ・カ・ホ」では歩行者が行き来する通路部分よりやや広めの広場状に整備されている。イベント開催時には人でにぎわう(画像提供:札幌市)

管理業務は指定管理者として選定された札幌駅前通まちづくりが担う。この会社は、地元の商店会、立地企業、商工会議所、市の18団体・企業が、2010年9月に共同で設立したまちづくり会社。札幌駅前通では、地下部分の「チ・カ・ホ」の指定管理業務にあたるだけでなく、地上部分の魅力づくりにも取り組む。コンソーシアムの主要メンバーでもある。

データ取得にセンサーやビーコン

この「チ・カ・ホ」での実証実験で取得するデータの一つは、通行者の量と方向だ。市は2018年1月ごろをめどに「チ・カ・ホ」内に赤外線人感センサーを設置し、その測定態勢を整える予定だ。

もう一つは、2017年11月にリリース予定の「(仮)さっぽろアプリ」利用者の登録情報と移動情報だ。登録情報はアプリの利用登録にあたって取得する属性情報。移動情報は利用者のスマートフォンと日本電信電話(NTT)が「チ・カ・ホ」内に設置済みの近距離無線技術「ビーコン」を用いて取得するものだ。これらのデータはコンソーシアムが開発・運営する都心版データプラットフォームに集約される(図)。

(図)「チ・カ・ホ」での実証実験の全体像。都心版データプラットフォームに蓄積されるデータのうち、「(仮)さっぽろアプリ」への登録情報を匿名加工処理したもの、ビーコンを通して取得した移動情報、赤外線人感センサーを通して取得した通行者の量と方向の情報は、札幌市も独自のデータベースで一元管理。2018年度には人工知能(AI)を用いたその傾向分析に取り組む予定だ(資料提供:札幌市)

「(仮)さっぽろアプリ」は、地下に滞在する利用者に天気やイベントなど地上の情報を提供したり、札幌駅前通まちづくりが開催中のイベントやクーポンを発行する店舗に利用者を誘導したりするもの。開発・運営にあたるのは、都心版データプラットフォームと同じコンソーシアムである。「成長するアプリ」を目指し、民間事業者が開発する各種サービスとも連携していく。2018年度には新しいサービスのアイデアを競う「ハッカソン」を開催し、蓄積されたデータをサービス開発につなげていく予定だ。

機能面でのポイントは、地上と地下のつなぎにある。

北海道開発局が2016年3月に公表した先ほどの共同調査の結果によれば、札幌駅前通は「チ・カ・ホ」の開通で通行量が2~3倍に増えたが、地上部分に限れば一時は半減を超える落ち込みを見せた。札幌駅前通地区では地上でもまちの魅力を一段と高める必要に迫られる中、「チ・カ・ホ」と同じ仕組みで道路の一部を広場として管理する「アカプラ」と呼ばれる空間で地元委員会組織が「サッポロフラワーカーペット」「さっぽろ八月祭」など各種のイベントを開催している。

実証実験を担当する札幌市まちづくり政策局都心まちづくり推進室都心まちづくり課長の西村剛氏は「地上と地下の連携を深めることが大事。それを強化するには、例えば地上でいまこのようなイベントを開催しているといった即時性のある情報を提供できるアプリが役立つ」と指摘する。アプリの道案内機能に、地上と地下のつなぎ役を期待する。

都心版データプラットフォームに集約されるデータの使い道の一つは、まちづくり会社のエリアマネジメント活動への展開だ。