災害時の情報共有にもデータ活用

西村氏は「例えば『チ・カ・ホ』利用者の年齢層が日時によってどう異なるかが分かれば、イベントの打ち出し方を見直すことができる。また『さっぽろ雪まつり』など混雑時にもできるだけ快適に過ごしてもらうため、店舗などで一時的に時間をつぶしてもらうような誘導も可能になる。蓄積されたデータを分析することが大事。そこには人工知能(AI)を用いることも視野に入れている」と説明する。

まちなかの通行量データはこれまで、限られた時期に、もっぱら人力で調査されてきた。先ほど紹介した「チ・カ・ホ」の通行量にしても、そうだ。それだけに、その数値が季節によって、また時間帯によってどう変化するかまでは分からない。「例えば、高校生や観光客がこの時間帯にここに集まっているということが分かれば、提供できるサービスはもっと広がるはずだ。しかもいまは、蓄積されたデータを、AIを用いて分析までできる。それを利用しない手はない」(西村氏)。

データのもう一つの使い道は、防災支援だ。

「チ・カ・ホ」では2015年2月、接続するビルの地下飲食店で火災が発生した時、大量の煙が流入し、各出入り口の長時間閉鎖につながるという事態が生じた。その後、市が関係者に聞き取り調査を実施したところ、「チ・カ・ホ」の防災センターでは接続ビルとの間の防火戸の開閉状況を把握できないこと、既存の音声による情報伝達だけでは情報不足に陥る可能性があることが明らかになった。

市ではその反省を踏まえ、「チ・カ・ホ」の出入り口を中心に異常を感知し、関係者間での情報共有・連携を可能にする防災情報共有システムの構築を2018年2月までをめどに進めている。

ここで異常を感知するのは、赤外線人感センサーだ。通行者の量と方向を日常的に測定し続けることによって、例えば火災など異常が発生し、通行量が著しく変化した場合、それを異常と認識する仕組みを構築する。防災情報共有システムではその異常事態を地図情報として「チ・カ・ホ」や接続ビルの防災センターで共有したうえで、接続ビルとの間の防火戸の開閉状況もそこで把握できるようにする方針だ。

アプリの利用継続に即時性を重視

防災情報共有システムは「(仮)さっぽろアプリ」とも連携し、アプリの利用者に緊急時情報を発信するとともに、利用者のスマホとビーコンを通してその避難情報を把握する。「それによって、例えば災害時にもかかわらず避難している様子が全く見られない利用者がいれば、そこにいち早く救出に向かうことができる」と、市都心まちづくり課長の西村氏は避難情報を把握する意義を話す。

2018年3月には、火災時の煙流入をきっかけに組織された札幌駅前通地区防災協議会の主催で避難訓練を実施する予定。市ではその機会に防災情報共有システムとしての機能を実証し、そこで明らかになった点をその後の運用に生かしていく方針だ。

こうしたまちのデータ活用で重要なのは、「(仮)さっぽろアプリ」を利用してもらうこと、そしてそれを続けてもらうことだ。このアプリを利用してもらわないことには、登録データや移動データは取得できない。これらのデータを継続的に取得するためにも、また災害時の的確な避難誘導や救出活動を可能にするためにも、「(仮)さっぽろアプリ」は利用し続けてもらわなければならない。

カギを握るのは、アプリ上で提供する情報の即時性にあるという。「例えばキャンペーンを展開すれば、最初の利用登録を促すことはそう難しくない。最大の課題は、以降も利用し続けてもらうことだ。それには、アプリの利用で役立つ情報が得られると感じてもらうほかない。登録を促すことと、利用し続けてもらえるようなタイムリーな情報を提供すること、この2つを同時に進めていく必要がある」(西村氏)。

エリアで取得したデータを一元管理し、それらを分析した結果をエリアマネジメントに生かす。「チ・カ・ホ」での取り組みは、そうしたまちのスマート化の一つ。それによって、利便性・快適性や安心度合いが高まれば、さらに人を呼び込むことができる。

ただ市は、エリアマネジメントによってにぎわい創出だけを目指しているわけではない。都市間競争が繰り広げられる中、エリアマネジメントを都市の魅力向上や地域経済の発展にまで結び付けていくことこそ重要という認識だ。エリアマネジメントにICTを掛け合わせることが、そうした目標に向けた新しい道筋を開くことにつながるのか――。今後の展開を注視していきたい。