こうした公共施設再配置の土台にあるのが、市が2016年3月に策定した「公共施設総合管理計画」である。人口減少などを背景に将来厳しい財政状況が想定されることから、市はこの計画に基づき公共施設の総量を圧縮し、跡地は原則として売却することで自主財源を確保していく。ただし民間事業者が保育や福祉など行政サービスを提供する場合には、円滑な事業展開を促す狙いから、売却に加えて長期貸し付けも視野に入れる。高浜小学校の建て替え事業と勤労青少年ホーム跡地活用事業は、この計画の中でそれぞれ「複合化」と「跡地活用」のモデル事業と位置付けられている。

試算では財政負担は5倍重くなる

この計画は2014年4月に総務省が全国の自治体に策定を要請したこともあって、現在はほぼすべての自治体で策定済みだが、高浜市の取り組みは比較的早かった。公共施設の現状と課題を把握する「公共施設マネジメント白書」の策定に2011年度に取り組み、それを基に公共施設のあり方を検討してきた。その過程では、0~14歳までの年少人口が将来にわたって大幅に減る見込みはないことから、学校施設を中心に施設機能の集約化・複合化を図る方針を打ち出してきた。「公共施設総合管理計画」は一連の検討成果でもある。

市が将来に対する危機感を市民と共有するために用いたのは、公共施設を維持するために将来必要になる更新費用を試算した結果である(図3)。

(図3)高浜市が「公共施設マネジメント白書」で示した公共施設の更新費用シミュレーション(資料:高浜市)

対象は114施設。これらの公共施設に関して、築30年で大規模改修、築60年で建て替えを実施し保有し続けた場合、2012年度から50年間の更新費用の総額は522.5億円、年度平均で13.1億円にのぼる。これに対して試算当時の直近5年間で市が支出してきた公共施設への投資的経費は年度平均約2.6億円。補助金・交付金をあてにしないとすると、財政負担は5倍も重くなるという。

これだけの差を見せられれば、誰もが総論は賛成だろう。ハコモノの時代ではないことは時代の共通認識と言ってもいい。

ただ総論賛成でも、個別具体の施設の話になると各論反対も出てくる。高浜小学校の「メインアリーナ」に移転するホール機能を備えていた中央公民館に関しては、築35年程度の施設を解体する是非などを巡って住民の反対運動が起きた。市議会が解体を決めると、反対派は署名を集め、住民投票にまで持ち込んだという経緯がある。

市の住民投票条例では、18歳以上の市民の3分の1の署名を集めれば、「市政運営上の重要事項」に関して市長に住民投票を請求できる。しかも市長は、原則としてそれを拒否できない仕組みだ。その一方で、投票率が2分の1に満たないと投票は成立しないということも定められている。2016年11月に実施された住民投票は、投票率30%台。結局、住民投票は成立せず、中央公民館の解体という市の決定は覆らなかった。

アクティビティーを生み出す発想

中央公民館は現在、解体中(写真3)。近くで刈谷豊田総合病院高浜分院を運営する医療法人豊田会が跡地を有償で借り受け、分院を移転させる。移転元の施設は、かつての高浜市立病院。医師不足に陥り存続が危ぶまれたことから、市が豊田会に建物を譲渡し、2009年4月以降、同法人が運営を引き継いできた。

(写真3)解体中の中央公民館。移転してくる刈谷豊田総合病院高浜分院は歩いて数分の至近距離(写真:茂木俊輔)

公共施設再配置をここまで進めてくることができた理由を、山本氏は「待ったなしという危機感から」とみる。市は災害対応機能が求められながらも耐震診断によって耐震性の不足が指摘されていた庁舎に関して、所有したまま建て替えや耐震改修に踏み切ると財政負担が重いことから、民間事業者が整備した施設を借り受けて利用する方向に改めた。新庁舎の開庁は2019年1月。「この事業を通じて役所内でそうした危機感を共有できた」(山本氏)という。

市はこれまで、公共施設の再配置を主に財政負担の平準化という観点から公民連携で進めてきた。モデル事業と位置付ける建て替え事業と跡地活用事業を終えると一段落の予定だ。山本氏は「その後は、小学校の改修に併せて、学校機能と公民館・高齢者向け施設などの機能との集約化・複合化を進めていくことになる」と話す。

このような機能に着目した公共施設再配置で思い出されるのは、主に分譲マンションで構成される住宅地で小学校を設計したある建築設計者の発想だ。設計にあたっては、人通りが途絶えがちな日中でも学校との間を行き来する人の流れが生まれるように、地域施設としての学校づくりを目指したという。

さらにアイデアレベルでは、教室をマンションの1階に置き、グラウンドは公園を、プールはコミュティ施設のものを利用する、というまち中への機能分散も考えていたという。まち中に新しいアクティビティーを生み出す――。この建築設計者が意識していたのは、そこだ。

 公共施設の再配置は、こうしたアクティビティーを生み出せる好機。財政の視点だけではなく、まちづくりの視点も加わると、危機感と同時に期待感も打ち出せそうだ。