狭い道路も低コスト化で打開

このような障壁に阻まれ、長年取り組んではいるものの世界都市の水準にまで達しない無電柱化を、ここにきて一段と加速させていこうとするのは、公共空間の安全性・快適性を高めていく必要があるという理由からだ。

一つは、地震災害への備えとして、である。首都直下や南海トラフなど巨大な地震災害に見舞われる危険性が以前にも増して見込まれるだけに、災害時の通行空間の確保という狙いから無電柱化を急ぐ必要がある。

もう一つは、インバウンドへの対応だ。ここ数年、海外からの訪日客数は増え続けている。東京五輪・パラリンピックの開催を前に、都市景観を世界に誇れる顔として改善していこうという狙いから、無電柱化の加速化が望まれる。

最大の課題であるコストに関しては、国がすでに低コスト化に向けた具体の手法を技術的に検証済み。管路をより浅い位置に埋設する「浅層埋設」とケーブル類をまとめて小型のボックスに納める「小型ボックス活用」の2つの手法(図3)が先行している。

(図3)国が検証済みの低コスト化手法。自治体がそれを導入するモデル施工が「浅層埋設」、「小型ボックス活用」は進行中、「直接埋設」は2017年度に着手予定(資料:国土交通省)

国交省の田中氏は「土木工事費は『浅層埋設』で10%程度、『小型ボックス活用』で30%程度抑えられる見込み」と言う。国は必要な基準の改定を済ませ、新潟県見附市や京都市がこれらの手法を活用して取り組む事業をモデル施工と位置付けたうえで、ほかの自治体への展開を図る。2016年度内には技術マニュアルを作成し、手法の普及を促す。

国はこうした低コスト化に向けた整備手法の普及に併せ、幅員の狭い道路での無電柱化に弾みをつける考えだ。「例えば商店街や観光地では、地元で無電柱化のメリットを共有し、まちづくりの一環としてその推進を求める声が上がるのを期待する」(田中氏)。

確かに、市区町村が管理する幅員の狭い道路はスペースや財政面の制約から無電柱化はなかなか進まないのが実情だ。

国道からPFIの導入も始まる

例えば東京都の場合。国交省の調べによれば、道路延長の約1割にあたる国道・都道で無電柱化率は27%であるのに対し、約9割にあたる市区町村道では2%にすぎないという。市区町村道では幅員2.5m未満の狭い道路が延長ベースで94%を占める。

市区町村道での無電柱化の推進に向けては、東京都が市区町村への財政面・技術面の支援をこれまで以上に手厚くする方針を打ち出している。

財政面では、無電柱化推進法に基づく推進計画の策定費を全額補助する措置や、低コスト化に向けた整備手法を取り入れる事業で市区町村の負担分を補助金で肩代わりする措置を2017年度予算案に盛り込んだ。

技術面では関係事業者との技術検討会を今年1月に正式に立ち上げ、管路の材料見直しや小型化など低コスト化への方策を検討する。建設局道路管理部調整担当課長の有江誠剛氏は「その検討成果を、市区町村の事業にも生かしていく」と言う。

国はさらに、無電柱化へのPFI(民間資金を活用した社会資本整備)の導入に向けた道筋も開こうとしている。

PFIでは、民間事業者が道路管理者に代わって、調査・設計、電線管理者や地元住民との調整、電線共同溝の整備、その管理などの業務を担う(図4)。道路管理者は整備完了後、共同溝の建設費と管理費を事業期間内に分割で支払う仕組みだ。

(図4)PFIを活用した事業スキームのイメージ図。マンパワーが限られる道路管理者の業務をPFI事業者が肩代わりすることで、スピードアップへの期待も掛かる(資料:国土交通省)

国交省の田中氏は「幅員の狭い道路や地下埋設物が多いなど制約条件の多い路線で導入することを想定している。民間活用で低コスト化とスピードアップに期待を掛ける」と話す。直轄国道でまず試行し、その成果を踏まえ、自治体への展開を図る。

PFIの導入に向けてすでに動き出しているのは、島根県安来市内で事業中の一般国道9号の無電柱化である。中国地方整備局松江国道事務所ではPFI事業者の募集・選定に必要な検討や資料作成などアドバイザリー業務を担当する事業者とともに準備を進めている。

突き詰めれば、低コスト化も一定の財源の中でスピードアップを図る手段。究極の狙いは、無電柱化の加速化だ。それを、どのように実現するか――。民間の力がこれまで以上に広く求められるようになっていきそうだ。