使用料収入が常駐管理を可能に

池袋に本社を置く地元企業が選ばれたことを、平賀氏はこう評価する。「『よくする会』の会合で地元関係者と正面から向き合ってもらうことを考えると、全国チェーンを展開する事業者より地元オーナー企業のほうが適している。カフェレストランをオール豊島区民で運営していくというグリップセカンドの提案には熱意を感じた」

南池袋公園を空間面で特徴付けるもう一つの存在である芝生広場は、変電所設置工事の埋め戻しに用いた土壌の保水力が弱いため、そうせざるを得なかった面もある。芝生広場の開放を前提にすると、最大の課題はその管理だ。

来園者でにぎわえば、当然、踏み付けられる。芝生にできるだけストレスを与えないように広場を利用してもらうことを徹底する一方で、芝生の様子を観察しながら開放するか否かを決めるようなきめ細かな管理が欠かせない。平賀氏は「開放する以上、常駐管理が必要。公園管理者は芝生を敬遠しがちだが、区はよく踏み切ってくれた」と話す。

常駐管理は区で管理する公園としては異例の措置と言える。管理経費に相応の予算を確保できない限り、とても対応できないからだ。

財政上それを可能にしたのは、公園施設の貸床部分をカフェレストラン「RACINES FARM TO PARK(ラシーヌ ファーム トゥー パーク)」として使用するグリップセカンドからの使用料や公園の地下を変電所として占用する東京電力からの占用料である。それらの収入を南池袋公園の管理経費に充てることで、2016年度は2600万円、17年度は2840万円という額を計上できた。区はこの予算を基に、朝8時から夜10時までの常駐管理業務を西武造園に委託している。

常駐管理の甲斐あって、芝生の生育状況はいま良好だ(写真2)。区公園緑地課公園管理グループの担当者は「昨年11月に芝生広場で開催したイベント後は夏芝から冬芝への移行が思うようにいかず、広場を閉鎖し養生する期間を予定より長期にわたって取らざるを得なかった」と振り返る。今年度は、イベント主催者側に配慮を求める一方、夏芝から冬芝への移行スケジュールを見直し、養生期間を予定通りに納めるという。

(写真2)カフェレストラン「RACINES FARM TO PARK」前の芝生広場。生育状況は良好で、一面の緑が美しい。屋外のテラス席で飲食する来園者も多い(写真:茂木俊輔)

「芝生を守る」ことが活性化へ

「芝生を守る」という役割を運営面から担うのは、「よくする会」である。学識経験者の立場で会長を務める平賀氏は「芝生のことを紙芝居形式で紹介する『芝生教室』を開催したり、昨年11月に主催した『秋サンマ祭り』では募金を呼び掛けたりするなど、芝生広場の管理に理解を求める活動を展開してきた」と話す。

とはいえ、「よくする会」では発足当初から「芝生を守る」を強く意識していたわけではない。平賀氏が「よくする会」の立ち上げを提案したのは、地元関係者に南池袋公園のことを自分事として捉えてもらってその運営に携わって欲しかったから。準備段階から検討を進めてきた会則では、地域活性化を図ることを活動目的に掲げた。

「地域活性化に向けて具体的にどのような活動をするのか、正式発足後さらに1年かけて話し合ってきた。その結果、『芝生を守る』ことが、中長期的には重要という結論に落ち着いた」(平賀氏)。芝生広場の提供価値を持続させる、その役割を担うことを、「よくする会」が自ら決断したわけだ。

南池袋公園の再整備事業はさらに大きな構想に発展していく。区が2017年度予算で目玉プロジェクトとして打ち出した「4つの公園整備構想」である(図2)。

(図2)豊島区が2017年度予算で打ち出した「4つの公園整備構想」。まちの回遊性を高めることで、池袋という巨大なターミナルに集う来街者をまち側に呼び込む狙いだ(資料:東京都豊島区)

池袋駅周辺で区は南池袋公園に続き、池袋西口公園と中池袋公園を再整備し、造幣局跡地の一部に新しい公園を整備する計画を持つ。これら4つの公園を拠点に駅周辺の回遊性を高めていく構想だ。区公園緑地課の平井氏は「『公園からまちづくりへ』の展開に今後はつなげていく」と意欲をみせる。

折しも今年6月には、都市公園の再生・活性化を図る狙いで都市公園法が改正され、収益施設の設置管理制度や公園の活性化に関する協議会の設置がその中に位置付けられた。南池袋公園の取り組みは、これらの新制度を先取りしたものと言える。

南池袋公園のように中心市街地に位置する都市公園であれば、その再生・活性化を地域の再生・活性化につなげやすい。区が描く「4つの公園整備構想」のような公園を起点とするまちづくりに、新たな可能性が開けそうだ。