神奈川県座間市内の住宅団地で農家カフェ(写真2)を、千葉県柏市内の農業公園で農家食堂を運営するアグリメディアでも、具体のプランを検討中だ。諸藤氏は「『シェア畑』だけでは農家の事業収入は限られる。これまでのノウハウを生かしながら、シナジーを発揮できそうな『シェア畑』にレストランを併設する仕組みを提供していきたい」と話す。

(写真2)アグリメディアが神奈川県座間市のホシノタニ団地で運営する「シェア畑」と住棟1階の農家カフェ。撮影は2015年11月のイベント開催時(写真:茂木 俊輔)
(写真2)アグリメディアが神奈川県座間市のホシノタニ団地で運営する「シェア畑」と住棟1階の農家カフェ。撮影は2015年11月のイベント開催時(写真:茂木 俊輔)

都市部で農地という土地利用を積極評価し、営農継続まで支援するような一連の動きの背景には、2015年4月に議員立法で制定された都市農業振興基本法がある。人口が減少し宅地化への圧力が弱まる一方で、都市住民の間に「食」や「農」への意識が高まってきたという、時代の流れを踏まえたものだ。

この法律では、都市防災、景観形成、国土・環境の保全、交流の場の提供など、都市農業の多面的な機能に着目し、都市農地の有効活用と適正保全を掲げる。国がこの法律に基づき2016年5月に定めた都市農業振興基本計画では、都市政策と農業政策の両面から都市農業を再評価し、「都市農業の担い手確保」「都市農業の用に供する土地の確保」「都市農業振興施策の本格的展開」の3つの分野で具体施策の方向性を示した。

都市農業の担い手にとって追い風が吹く中、アグリメディアでは都市部の宅地を農地として活用する事業にも力を入れていく方針だ。諸藤氏は強調する。

「『シェア畑』のユーザーには、そこを社員や顧客の交流の場として活用する企業や保育施設・高齢者住宅が少なくない。こうした都市農業に対するニーズを持ったユーザー予備軍に近い場所で、農地をもっと提供していきたい」

農地という土地利用に付加価値

課題は、土地税制と緑化基準という。

アグリメディアでは、すでに企業の所有地で「シェア畑」を展開している例もある。ただ、その土地はもともと宅地なので、宅地並みの税が課される。「税負担が重く、企業側の事業収支は合わない。『シェア畑』の開設には別の意義を見いだし事業を続けているのが実情」と諸藤氏。農地利用という現況主義に立ち、緑地保全や地域貢献という点からも課税のあり方が検討されるのが望ましいという。

一つの目安は、三大都市圏の特定市と呼ばれるエリアではない、一般の市街化区域内農地の場合と同じ考え方に基づく水準という。特定市以外では生産緑地地区の指定を受けていない農地は、評価は宅地並みとはいえ課税は農地に準じた水準に抑えられる(図3)。諸藤氏は「それと同じ考え方に基づく水準であれば、事業収支は合いやすい。土地所有者に対しては農地として活用しようというインセンティブとして働く」と話す。

(図3)都市農地に適用される相続税納税猶予制度と都市農地に課される固定資産税。三大都市圏特定市か否か、生産緑地か否かで扱いが異なる。農林水産省ホームページ「農地に関する税制特例について」、国土交通省都市局都市計画課「都市農業振興基本計画に基づく制度改正について」(一般財団法人都市農地活用支援センター平成28年度都市農地活用実践ゼミナールテキスト、2017年2月)に基づき日本政策投資銀行が作成(資料提供:日本政策投資銀行)
(図3)都市農地に適用される相続税納税猶予制度と都市農地に課される固定資産税。三大都市圏特定市か否か、生産緑地か否かで扱いが異なる。農林水産省ホームページ「農地に関する税制特例について」、国土交通省都市局都市計画課「都市農業振興基本計画に基づく制度改正について」(一般財団法人都市農地活用支援センター平成28年度都市農地活用実践ゼミナールテキスト、2017年2月)に基づき日本政策投資銀行が作成(資料提供:日本政策投資銀行)

緑化基準は、開発事業に伴って敷地内に一定以上の緑地を確保することを自治体が義務付けるもの。先ほど説明したように、都市計画法上の「緑地」の中に農地を含むことが明記されたものの、緑化基準上の扱いで言えば、これまでは「緑地」の中に農地を含めない自治体がみられたという。「緑地面積の計算上、そこに農地の面積を算入できるようになれば、民間デベロッパーと組んで、その開発地内に居住者やテナントの利用を想定した『シェア畑』を確保しやすくなる」(諸藤氏)。

人口減少や都市住民の意識変化といった都市農業振興基本法の背景にある時代の流れが、農地を不動産活用メニューの一つに押し上げている。諸藤氏は「これまでのように駐車場やアパートでいいのかという将来に対する不安感が強い。建物を建てないという土地活用に対するニーズが高まってきている」とみる。

市街化区域内の農地は都市計画法で定める「緑地」に組み込まれたが、それに対する課税が今後どうなるかはまだ不透明だ。ただそれでも、農地という土地利用に付加価値を見いだし得る時代になっていくことは間違いない。