1980年代から90年代にかけて本社ビル建設や竹芝ふ頭の再開発が相次ぎ、ウオーターフロントとして脚光を浴びたJR浜松町駅から臨海部にかけての一帯。そのまちで再び大規模な開発事業が動き出している。後編ではその一つ、東芝の本社ビル(浜松町ビルディング)一帯の再開発プロジェクトを通して、このまちにどんな未来図を描けるのかをみていこう。

水辺を生かしたにぎわいの拠点が、東京・芝浦の運河沿いに生まれそうだ。超高層ビル2棟の足元から運河に向かってせり出すようにつくられた広場に多くの人が行き交い、運河には屋形船が航行する。運河沿いには飲食店舗が並び、人が集う(図1)。

(図1)「(仮称)セントラルプラザ」のイメージパース。浜松町ビルディングと芝浦運河は現在、道路で隔てられているが、新しく建設する2棟の超高層ビルは、その足元を運河と一体的に整備する計画だ(資料:野村不動産)

人の流れを大きく変えることになるのは、東芝が本社を置く浜松町ビルディングを中心とする一帯約4.7haの再開発プロジェクト「(仮称)芝浦一丁目計画」である。

事業主体は、野村不動産、グループ会社のNREG東芝不動産、東日本旅客鉄道の3社。浜松町ビルディングを取り壊し、オフィス、ホテル、住宅、商業施設などで構成する高さ約235mのツインタワーを、2029年度完成を目指し建設する(図2)。

(図2)外観のイメージパース。巨大なツインタワーを南東方向から見たところ。左が先行して2023年度に完成予定のS棟。右が2029年度に完成予定のN棟(資料:野村不動産)

東京湾に近く、目の前は芝浦運河。歩いて5分ほどのJR・東京モノレール浜松町駅は、品川新駅(仮称)や東京駅に近く、羽田空港と直結する。この再開発プロジェクトではこうした立地条件を生かし、国際ビジネス・観光拠点の形成を狙う。

野村不動産都市開発事業本部芝浦プロジェクト企画部長の金井治氏は「地元の港区では運河に架かる橋梁のライトアップを進めている。今後は夜のエンタテインメントの要素も検討し、水辺を生かしたにぎわいの拠点として位置付けたい」と意欲を見せる。

もともと東芝が本社を置く浜松町ビルディングが立地している場所とはいえ、その拠点性は再開発によって格段に高まる。

まず空間が大きく広がる。東日本旅客鉄道との共同事業で線路沿いに伸びる土地を敷地に取り込むうえ、都市計画の変更で容積率は480%から1120%まで跳ね上がることから、床面積は浜松町ビルディングの3倍以上、約55万㎡を確保する(図3)。

(図3)ツインタワーの断面図。低層部は商業施設で構成し、その上に、オフィスを配置する。上層階は、S棟はホテル、N棟は住宅の予定(資料:野村不動産)

オフィス就業者も、それだけ増える見通しだ。金井氏によれば、この再開発プロジェクトだけで、いまの倍以上、2万人は超えるという。南北両隣に立地するシーバンスや東京ガス本社ビルまで含めれば、計4万人規模に達する見通しだ。

日の出ふ頭に小型船ターミナル整備

その巨大なツインタワーには、人が集まる施設も組み込まれる。

低層階の一角を占める「次世代エネルギー交流施設」は、その一つだ。次世代エネルギーの普及促進に向け、自治体、民間企業、海外新興国の関係者らに、人材教育や技術指導などの情報を発信し交流を促す。次世代エネルギーとしてはまず、水素を念頭に置く。

ツインタワーのうち2023年度に先行して完成する予定のS棟には、その上層階にホテルを配置する。具体のブランドは未定ながら、金井氏は「まちのシンボルになるようなラグジュアリーブランドを想定している」と打ち明ける。

低層階を構成する商業施設には、約1万坪の規模を見込む。「シーバンスや東京ガス本社ビルに勤めるオフィス就業者の需要にも応えていく。近隣に増えてきたタワーマンション居住者の需要にも応えられる」(金井氏)。

観光拠点としての魅力を高める狙いから、近くの日の出ふ頭では、東京都港湾局と連携し、小型船ターミナルを整備し、舟運の活性化を図る。事業者は都港湾局からふ頭用地の一部を借りて、自らの費用負担で待合や店舗などの機能を併せ持つ施設を建設し運営する予定だ。完成予定は2019年4月。桟橋施設は既存のものを都港湾局が改修する。

将来、ここで目玉になるかもしれないのが、水素エネルギーを用いる燃料電池船だ。事業者であるNREG東芝不動産は東京海洋大学と共同で、この燃料電池船の実用化に取り組んできた。次世代エネルギーの普及促進と舟運の活性化という、この再開発プロジェクトに込められた2つの思いを、燃料電池船の実用化という形でも体現する。

目の前の芝浦運河に関してはまだ協議中の段階ながら、「川床」のように運河上にせり出した飲食店舗や船着き場を整備する構想も温めている。

折しも、都港湾局は「運河ルネサンス」という取り組みの下、芝浦や豊洲など運河を持つ地区単位でまちづくりと一体になった水域利用を後押ししている。この取り組みは、地区ごとに組織された協議会が、自ら作成した計画に基づき、施設の設置やイベントの開催などを行う一方、都港湾局が、計画の実現に必要な規制の緩和などで地元の活動を支援するものだ。事業者側は現在、「この協議会組織や都港湾局と話し合いを重ねている段階」(金井氏)という。