周辺の基盤整備で回遊性の向上図る

「(仮称)芝浦一丁目計画」で目指す国際ビジネス・観光拠点の形成に欠かせないのが、この計画でも掲げる回遊性の向上だ。

背景には、鉄軌道の拠点である浜松町駅や舟運の拠点である日の出ふ頭に近いながらも、それらとの連携を取り切れていないという課題がある。

各鉄道事業者のデータによれば、浜松町駅、さらに都営地下鉄大門駅の1日平均乗降人員は、3者・5路線の単純合計でざっと65万人。歩いて5分ほどの近さに、これだけのポテンシャルがあるわけだ。

かたや日の出ふ頭は、浅草やお台場海浜公園などとの間を結ぶ水上バスや各種のクルーズ船が発着し、利用者の出入りは決して少なくない。ところがその中には、観光バスの利用者も含まれる。この辺りは竹芝ふ頭と違って、現在はまちから孤立している感が強いこともあって、ふ頭近辺に滞留する人は限られる。

もちろん、浜松町ビルディングを中心とする一帯は、現在はオフィス街。立地する企業が休みの週末は、人を呼び込む力が弱まるのはやむを得ない。しかし再開発後は、観光拠点も目指す以上、人を呼び込む回遊性が欠かせない。

そこでこの再開発プロジェクトでは、敷地内に拠点性の高いツインタワーを建設するのに併せ、周辺の基盤施設の整備にも乗り出す。

一つの軸は、浜松町駅との間を結ぶルートである。同駅南口にはすでに、JRの線路上空を渡る東西自由通路が整備されている。これを、オフィス就業者の倍増に対応できるように、およそ倍の規模に拡幅・再整備する。

もう一つの軸は、日の出ふ頭の一角に整備する小型船ターミナルとの間を結ぶルートと、さらにその先、竹芝ふ頭方面との間を結ぶルートである。

小型船ターミナルの整備予定地との間は直線距離では近いものの、現在は海岸通りで隔てられ、信号のある横断歩道を渡るためには遠回りせざるを得ない。金井氏は「最短距離で結ぶには、信号と横断歩道を移設する必要がある。行政との協議を通してそれを実現したい」と、今後の展開に期待する。

再開発プロジェクト3地区で連携へ

小型船ターミナルの整備予定地と竹芝ふ頭方面との間を隔てるのは、古川だ。整備予定地対岸の竹芝小型船発着所との間には現在、歩行者専用の橋が架かっているものの、通行は禁じられている(写真1)。都港湾局ではこの橋に耐震改修工事を実施し、通行可能に改める。「そのうえでさらに、事業者側の費用負担で美装改修工事を施し、完成後にはライトアップを行う計画だ」(金井氏)。

(写真1)竹芝小型船発着所側から見た小型船ターミナル整備予定地。右手に架かる歩行者専用の橋を、耐震改修工事によって通行可能にする(写真:茂木俊輔)
(写真1)竹芝小型船発着所側から見た小型船ターミナル整備予定地。右手に架かる歩行者専用の橋を、耐震改修工事によって通行可能にする(写真:茂木俊輔)

回遊性の向上を図ることで事業者が目指すのは、浜松町というまちのブランディングだ。「浜松町はこれまで、主に乗り換え利用の通過駅だった。それを、人が目的を持って訪れる目的駅に替えていきたい」。金井氏はそう訴える。

そこで、同じ浜松町というまちで再開発プロジェクトを展開中の地区同士で互いに連携し、にぎわい創出を図る(図4)。基盤施設の整備で回遊性を向上させるというハード面の対応だけでなく、地区同士の連携というソフト面の対応にも乗り出すわけだ。

(図4)再開発プロジェクトが展開されている3つの地区が互いに連携し、にぎわい創出を図る(資料:野村不動産)
(図4)再開発プロジェクトが展開されている3つの地区が互いに連携し、にぎわい創出を図る(資料:野村不動産)

連携を図る地区の一つは、「浜町町二丁目4地区」だ。浜松町の駅前、世界貿易センタービルディングを中心とする一帯で、その管理・運営会社の世界貿易センタービルディングらが超高層オフィスビルの建設を進めている。もう一つは、前編で取り上げた「(仮称)竹芝地区開発計画」(「都市再生ステップアッププロジェクト(竹芝地区)」)の地区である。東急不動産と鹿島建設が共同で設立した事業会社が現在、業務棟を建設中だ(写真2)。

(写真2)海側から浜松町を望む。左端のツインタワーは、シーバンス。少し間を置いて、浜松町ビルディング。右手、建設中のビルが、前編で取り上げた「(仮称)竹芝地区開発計画」の業務棟。それらの間にそびえる2棟のビルは、竹芝ふ頭の再開発で1990年代に完成した賃貸オフィスビルとホテル(写真:茂木俊輔)
(写真2)海側から浜松町を望む。左端のツインタワーは、シーバンス。少し間を置いて、浜松町ビルディング。右手、建設中のビルが、前編で取り上げた「(仮称)竹芝地区開発計画」の業務棟。それらの間にそびえる2棟のビルは、竹芝ふ頭の再開発で1990年代に完成した賃貸オフィスビルとホテル(写真:茂木俊輔)

各地区で再開発プロジェクトに取り組む事業者は2017年10月、連絡会を立ち上げた。「互いの連携によって何を生み出せるかは、これからの協議次第だ。機能連携を図ることでにぎわいを生み出し、浜松町というまちのブランディングにつなげたい」。金井氏は一事業者の立場で今後の展開に期待を寄せる。

これら3つの地区で生み出される床面積の合計は100万㎡超。品川新駅(仮称)の周辺で計画されている開発プロジェクトに匹敵する規模を持つ。エリアマネジメントの段階でうまく連携を図れれば、浜松町という一つのまちに新しい価値が生み出されそうだ。