2020年東京五輪・パラリンピックをにらみ、国土交通省がプロジェクションマッピングの実施に向けた環境を整備した。2018年3月には、それを「投影広告物」と位置付け、投影の可否を判断するルール作りへのガイドラインを公表した。これまでは投影を断念せざるを得なかったプロジェクトもあっただけに、アーティストからも期待が寄せられている。

繁華街の雑踏では企業CMの映像が巨大なビル全面に投影され、再開発エリアではアーティストの映像がにぎわい創出に用いられる時代がやって来そうだ。そこで映し出される映像は、プロジェクションマッピング。投影広告物である。

駅前や交差点など一等地のビル壁面に設置される大型ビジョンと違って、画面に設備は伴わない。そこでは何らかの情報を発信するだけでなく、画面という枠にとらわれない自由な空間演出も可能になる。まちの表情は昼と夜で一変する。

プロジェクションマッピングで魅力あるコンテンツを提供できれば、エリアの活性化や都市の魅力向上にもつながる。大型開発プロジェクト完成後、そのエリアの管理・運営を担うエリアマネジメント団体にとっても、注目度は高い。

そのきっかけをつくったのが、国土交通省が進めてきたプロジェクションマッピングの実施に向けた環境整備である。

プロジェクションマッピングは新しい技術だけに、その実施に対する明確なルールは定められていなかった。都道府県などは屋外広告物法に基づく屋外広告物条例に照らし、投影の可否を判断したり許可基準を適用したりしてきた。

ところが規制の現場に投影可否の判断を委ねる中、プロジェクションマッピングの実施が許可されなかった例は少なくないようだ。

国交省都市局公園緑地・景観課景観・歴史文化環境整備室長の渡瀬友博氏は「プロジェクションマッピングの実施を望む民間ニーズはあるものの、まちなかでは現行ルールのあり方が障害になって許可されない例があると聞いている」と明かす。

国交省はそこでまず、屋外広告物条例とは別のルールを適用する考え方を明らかにしたうえで、新しいルールと位置付ける投影広告物条例のひな型とも言えるガイドラインを示した。都道府県などはそれを参考に条例を定めていく。

高架沿いの投影を首都高から

投影広告物条例を屋外広告物条例とは別に位置付けた理由は、広告物としての性格の違いにあるという。渡瀬氏はこう説明する。

「屋外広告物条例で規制対象とする屋外広告物とは看板など構造物を指す。それらは劣化し落下する恐れがあるため、安全性を確保する必要がある。これに対してプロジェクションマッピングは、投影広告物だから、その必要はない。ルールは自ずと異なる」

こうした環境整備に対しては、プロジェクションマッピングの映像演出を手掛けてきたアーティストからも歓迎の声が上がる。

ネイキッド代表取締役CEOの村松亮太郎氏は「プロジェクションマッピングへの規制は多く、途中でとん挫したプロジェクトは山ほどある。マネタイズの課題も解決できるようになれば、パブリックなイベントでも実現可能になっていく」と指摘する。

村松氏は、東京駅丸の内駅舎で2012年12月に開催されたプロジェクションマッピングを皮切りに、東京国立博物館やラゾーナ川崎プラザで開催されたイベントでも映像演出を手掛け、国内でその世界を切り開いてきた(写真1)。

(写真1)東京駅丸の内駅舎のプロジェクションマッピングによる映像ショーとして話題になった「TOKYO HIKARI VISION」。東京・丸の内エリアを会場に2012年12月に開催された「東京ミチテラス2012」の一環として実施されたⓒ東京ミチテラス2012実行委員会

2017年6月から約3カ月にわたって東京ドームシティ「Gallery AaMo(ギャラリーアーモ)」で開催した「TOKYO ART CITY by NAKED」では総合演出を担当。数多くの模型やプロジェクションマッピングなどを用いて「仮想東京」を表現した(写真2)。

(写真2)東京ドームシティ「Gallery AaMo(ギャラリーアーモ)」で2017年6月から9月まで開催した「TOKYO ART CITY by NAKED」。写真は渋谷のスクランブル交差点を表現したもの。2018年は台北市内で6月から9月まで開催する予定ⓒ2017 NAKED Inc.

その村松氏が挑戦したいというのは、首都高速道路を歩行者に開放し、そこからその高架沿いに並ぶビルへのプロジェクションマッピングを歩きながら眺めるようなイベントだ。米ニューヨーク市の鉄道高架上に整備された公園「ハイライン」のイメージを重ねる。

「首都高をクルマで走っていると勾配があってカーブが多く、山道のように感じる。山道を歩いていると湖に出くわすように、高架と同じレベルのプロジェクションマッピングを楽しむことができれば素敵ではないか」(村松氏)

新しいルールがきっかけになって文化に向き合う意識が高まっていくことにも期待を懸ける。意識が高まっていけば、例えばプロジェクションマッピングが近くで実施されているとき、それを盛り立てようとする行動にもつながるという。