駅前広場や公園も許可地域に

「東京駅丸の内駅舎のプロジェクションマッピングでは、週末の見栄えが一番良かった。照明が消えて周辺のビル街が暗くなるからだ。平日でも、素敵なことをやっているから、と率先して照明を消してくれるような文化が育まれるといい」(村松氏)

今回の環境整備を受けて都道府県などがプロジェクションマッピングのルール、つまり投影広告物条例を定めていくと、その取り扱いはどのように変わっていくことになるのか――。ガイドラインの内容を基に、将来の可能性を探っていこう。

投影広告物条例ガイドラインの項目立ては屋外広告物条例ガイドラインのそれと基本的には同じ(表)。しかし内容は、「禁止地域・物件」「許可地域」「適用除外」という3つの点で異なる。いずれも、プロジェクションマッピングの実施を後押しする方向だ。

(表)プロジェクションマッピングに関するガイドライン(投影広告物条例ガイドライン)と屋外広告物条例ガイドラインの比較。「禁止地域」以下の項目立ては変わらないが、その内容には違いがみられる(資料:国土交通省)

まず「禁止地域・物件」では、プロジェクションマッピングの実施を禁じる地域や物件を限定することで実施可能な地域や物件の範囲を広げている。

図1に示したように、人の往来があるようなエリアは通常、禁止地域か許可地域に明確に区分けされている。その中で、例えば駅前広場、官公署、公園、博物館などは、屋外広告物は禁止だが、プロジェクションマッピングの実施は許可という考え方を取る。

(図1)「新ガイドライン」はプロジェクションマッピングの実施が可能になるエリアのイメージ。屋外広告物条例ガイドラインでは禁止地域に定められていた駅前広場、官公署、社寺、公園、美術館、博物館などを、そこから外し、可能なエリアを大きく広げた(資料:国土交通省)

禁止物件は、道路交通安全に影響を与えるものなどに限定するという考え方を示した。例えば、屋外広告物は禁止していた街路樹や石垣などをスクリーン代わりにプロジェクションマッピングを実施することは可能という方向を打ち出している。

次に「許可地域」。ここでは条例に基づく規則で許可基準を定めることを想定している。この許可基準に関して、商業地域では面積基準を定めず、壁面全体に投影できるようにすることが望ましいという考え方を示した。

この点も、屋外広告物の取り扱いに比べれば規制は緩めだ。商業地域内で許可される屋外広告物の面積は、例えば東京都で言えば商業地域内で100㎡まで。こうした商業地域内の面積基準を、プロジェクションマッピングでは想定していない。

東京、名古屋、大阪は条例を

最後は「適用除外」である。除外対象には、公益性があって期間限定で実施されるものという要件が新しく加えられた。その要件を満たせば、許可地域でも禁止地域でも許可不要。定められた手続きを踏まずにプロジェクションマッピングを実施できる。適用除外の一例としては、2020年東京五輪・パラリンピックの関連イベントが想定される。

ここで問われる公益性の判断基準として、ガイドラインでは一定の考え方を示している。そのうちの一つが、企業広告などが占める割合に上限を設定するというものだ。投影時間と投影面積の積で3分の1という数値を上げている(図2)。

(図2)プロジェクションマッピングの公益性は、企業広告などが投影時間と投影面積の積で全体の3分の1以下であれば認められる(資料:国土交通省)

これは裏を返せば、公益性が必要とは言ってもスポンサー企業からの支援は受けられるということ。その露出を一定程度に抑えれば、投影広告物条例の適用除外として比較的自由にプロジェクションマッピングを実施できるわけだ。

国交省はこうした投影広告物条例ガイドラインを公表すると同時に、民間事業者向けにプロジェクションマッピング実施マニュアルもまとめた。このマニュアルではプロジェクションマッピングを実施する場合に必要な手続きを整理している。

例えば道路を挟んで向かいのビルにプロジェクションマッピングを実施する場合の手続きである。高所から高所への投影であれば実施可能だが、そうでない場合には道路交通安全の面で支障を来す恐れがあるため、地元警察署に問い合わせるよう求めている。

今後の流れとして国交省が期待するのは、都道府県などが作成した条例案を年内の議会に上程し、来年度には条例を施行に移す、という工程だ。2019年9月から国内12会場で開催されるラグビーワールドカップ2019に間に合わせたいという。

国交省の渡瀬氏は「東京、名古屋、大阪の三大都市には、積極的なルール作りを期待する。ラグビーワールドカップや東京五輪・パラリンピックに向けてプロジェクションマッピングの経験を積み、その後も経験を踏まえながら活用を続けられるといい」と願う。

これまではテーマパークなど閉ざされた空間でのエンターテインメントという性格が色濃かった大規模なプロジェクションマッピング。それが間もなく、まちなかにも広がり始め、情報・エンタメインフラとして都市に欠かせないものになりそうだ。